無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

魂の瞬間風速。

ELEVEN FIRE CRACKERS

ELEVEN FIRE CRACKERS

 社会にうまく同調できず、世の中に居場所がない気がする。そんな孤独感や閉塞感といった繊細な感情を激しいサウンドで鳴らすのは、今の世の中では珍しいことではない(エモって要はそういうモノなんだろう、と思うんだけど)。ELLEGARDENの曲も、総じて言えばそういう部類に入るのかもしれない。ただ、細美武士という人は弱い自分を認めたうえで、、そのままじゃいやだという葛藤の中から音楽を生み出しているような気がする。少しづつでも常に自分を新しいステージに上げていこうという意思を感じる。それはもちろん弱い人間などにできることではなくて、端から見ているとなんでそこまでというくらいに自分を追い詰めているのだけど、それができるのは音楽への信頼ゆえなのだろう。もっと言えば、バンドのメンバーへの信頼、そして自分たちを追いかけてくれるファンへの信頼なのだと思う。
 「Fire Cracker」、「Gunpowder Valentine」などの疾走感溢れるラウドなナンバーから、「アッシュ」みたいなポップなサビを持つ曲まで、どこ切ってもいい曲だらけのアルバム。個人的には「高架線」の叙情性も好き。そして「Space Sonic」は文句なしでカッコよすぎる。たった32分のアルバムなんだけど、物足りなさは皆無。むしろあっという間に聞き終わるので何度も繰り返し聞ける。スタンディングの激しいライヴに行くと、前の方でモッシュしてる人たちが終わったあとビッショビショのTシャツが体にまとわりついたままでヘトヘトになりながら、でも最高の笑顔で歩いてるのを見るけれども、通して聞くとそんな気分になるアルバム。
 彼らのようにほぼ全編英語で歌うバンドは多いけれども、彼らはその中でも発音や歌い回しにカタカタっぽさがなくて違和感なく聞ける。少なくとも英語で歌うなら最初に越えてもらいたいハードルなんだけど、実はそこがクリアできてる日本のバンドって中々いないと思う。