無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ロンドンのリアル。

Weekend in the City

Weekend in the City

 前作『サイレント・アラーム』から2年、相変わらずUKのロックは(「有望な」)新人が次から次にうようよと出てきていて、デビュー作が成功したバンドも気を抜いたセカンドを出せばすぐに忘れ去られてしまうような状況のようだ。そんな中、ブロック・パーティーもそれなりの危機感をもってこのセカンドを製作したのだろう。前作の延長という安易なレールには乗っからない、気合の入った内容になっている。
 ジャックナイフ・リーのプロデュースによるサウンドメイキングはかなりその音の幅を広げ、ライブでは再現しにくそうな感触の曲もある。しかし今作で最も大きく変化したのは歌詞。前作では、英語がわからないということを抜きにしても、何を言いたいのかよくわからない言葉遣いが多かった。しかしこのアルバムで語られる言葉は、ダイレクトに彼らの言いたいことが伝わる、非常にわかりやすいものになっている。そのテーマとなっているのは、アルバムのタイトル通り、都市生活者の日常であり、現在のイギリス、ロンドンに住む人々が日々直面するであろう様々な問題や孤独についてだ。そこで追及されているのは、徹底的な「リアル」である。「ザ・プレイヤー」や「オン」では、クラブで踊ろうにもカッコよくもなく、目立てない哀しい若者の叫びが情けなくも痛切に歌われる。しかし、これがロンドンの若者の大多数の現実なのだろう。どこの国でもそうなのだ。こうした曲は多くのリスナーの共感を得るだろうし、個人的にも彼らがより身近に感じられるようになった。
 なんとなくカッコよさげな雰囲気に流されないぞ、一過性の流行バンドで消費されねぇぞ、という決死の覚悟が伝わってくる。前作は超合金ロボットのようなカッコよさがあるアルバムだったが、今作には弱さをさらけ出す強さと美しさを持った人間の血が流れている。いいアルバムだと思う。