恋愛という名の宗教。
- アーティスト: RADWIMPS,野田洋次郎
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/12/06
- メディア: CD
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単純に好きとか嫌いとか、あるいは性的な欲求とか、そういうところを過ぎて、この人といると自分自身が成長できる、あるいは人生が豊かになる、そう思える相手に出会ってしまうと、「恋愛」という言葉を使うのが安っぽく思えてしまうことがある。恐らく、野田の経験している恋愛もそういう類のものなのではないだろうか。そして、その経験が濃密であればあるほど、喪失した時のショックもまた大きい。「有心論」という名曲は野田が彼女と別れたときに生まれた曲だが、ベタベタのラブソングなどでは全くなく、どこか俯瞰した視点があることが素晴らしい。ボキャブラリーの豊かさも凡百のラブソング以上の意味を楽曲に与えている。メロディーからはみ出そうな言葉の多さは野田の感極まりの密度ゆえである。そして、その言葉とメロディーは、35歳の既婚者を涙させるに十分な破壊力を有している。恐るべき21歳だと思う。
野田は曲の中で、彼女のことを神にも等しい存在として神格化している。野田にとっては彼女に出会ったこと自体が運命であり、彼女との恋愛は宗教的な意味すら持ち得る崇高な体験なのだ。その個人的な体験を曲にすると、それは万人にとって心打たれる普遍的なストーリーとなる。「ふたりごと」も「バグッバイ」も、21歳の若造が作ったとは思えないほどに人生の真理に踏み込む名曲だと思う。