無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

成長を刻むラテンビート。

INDEPENDIENTE(初回限定盤)

INDEPENDIENTE(初回限定盤)

 Dragon Ashの約1年半ぶりの新作。前作の感想(id:magro:20051006#p2)のとき、僕は「次のアルバムも2年後くらいにちゃんと出ると思う」と書いたのだけど、予想よりも早かった。それだけ、降谷建志Dragon Ashでやりたい音楽というものがはっきりと見えていたということなのだろう。ここ数年、『HARVEST』のあたりからいい感じで回り始めてきた流れがここに来て結実してきている気がする。
 その、今のDAで鳴らそうという音楽はどういうものかというと、前作のラテン風味をさらに推し進めた、今の日本においては本当にオリジナルなサウンド。なぜこういう方向に来たのか、というのははっきりとは分からないが、最初はリズムだったのだろうと思う。しかし、このアルバムを聞いても分かると思うが、このサウンドフォーマットの中では降谷の作る叙情的なメロディーがことさら際立つのである。それを狙ってこういう音にしているのじゃないか、と思うほどズッぱまりなのである。そして、前作以上に生音の比重が高くなっている。そうすると、音圧的に、人間の声に近い音が増えるので、アンサンブルの中でもボーカルが埋もれずにはっきりと聞こえる。それもまた、今作のエモーショナルな雰囲気に繋がっていると思う。こうした叙情性というのが降谷の現在のモードなのかというと、それは半分あたりで半分は違うだろう。DAだからこういうアウトプットにしている、と彼は言うに違いない。しかし、前作からはっきりと見えているように、DAというバンドの存在がミュージシャンとしての自分自身と切っても切れないものであるということを彼も気づいているはずだ。以前のように意固地になるでもなく、フラットな形で自分とファンとメンバーに向き合った結果、こういうアルバムが出てきたのだとしたら、それは彼のミュージシャンとしての成長を示すものに他ならない。素晴らしい事だと思う。
 20世紀から21世紀に変わる頃、いわゆる「ミクスチャー」と呼ばれるロックの最前線にいたDAであるが、今やこのアルバムは当時のサウンドとは全く別のステージにいる。当時の戦友たちが厳しい状況に追い込まれていく中で、降谷とDAは新たな「ミクスチャー」の形を示し、いまだ第一線をサヴァイヴしている。「few light till night」や「Beautiful」のような曲を聴くと、この10年間で彼らが何を犠牲にし、何を手に入れてきたのかということが透けて見えるようだ。血沸き肉踊る瞬間もあるし、ラストには感動が待っている。何度聞いてもいいアルバムだと思う。