無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

2年目のジンクスなど無縁。

Favourite Worst Nightmare

Favourite Worst Nightmare

 前作から1年とちょっとで出たアークティック・モンキーズの2作目。昨今の「ネクスト・グレイト」な新人たちの多くがかなりの時間をかけて、様々な試行錯誤の元で1作目を越えようとしている中で、このインターバルは非常に短いと言えると思う。ほとんどの曲が2分〜3分台というコンパクトな中に、今このバンドが持てる言葉とメロディーとサウンドがみっちりと詰め込まれている。にもかかわらず、ごちゃごちゃした感じは全くなく、むしろすっきりと整理されている印象。「ブライアンストーム」のように、音符の細かい彼らのハードロックンロールをさらに純粋培養して強度だけを上げたような曲もあるが、「フロレセント・アドレセント」や「オンリー・ワンズ・フー・ノウ」、「505」のようにミドル・テンポでゆったりと聞かせる曲もあって、サウンドの幅は確実に広くなっている。それが付け焼刃ではなく、きちんと自分たちの血肉となっているのが憎い。「ドゥー・ミー・ア・フェイヴァー」のように、ハードボイルド映画の主題歌のような面白い曲もあるし、いろいろな意味で余裕すら感じさせる。
 歌詞は、若者らしくというか、女を連れ込んでヤッてみたいなものも多いのだけど、正直そこには全くリアリティを感じない。イギリス人ならどうかといわれると、それも怪しい。現代の若者のリアルなストーリーがここに描かれている、というよりは、このアルバムの中にあるサウンドと、前作からのバンドの成長そのものが雄弁に物語を語っているような気がする。アラがないわけじゃないし、ツッコミどころもあるけれども、それがどうしたという話だ。この成長ぶりは昨年のダルビッシュ有に匹敵する、と思う。