無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO(2)〜魂花饗宴

■2007/08/17@石狩湾新港
 個人的に、仕事の上では本当なら石狩に来ている場合などではなかったのだけど、僕は仕事よりもなんとしてでも自分にとって必要なことを選ぶ部類の人間なので(たいていの人はそうだとは思うのだけど)、ほとんどぶっちぎりに近い形で仕事休んだ。激務の狭間の本当の意味でのオアシスだったのだ、今年のRSRFESは(肉体的にはまったく休めていないけれども)。そして、ああ、同僚から白い目で見られようがなんだろうがここに来てよかった。音楽好きで聞いてきてよかった。心からそう思える至福の瞬間がこのあと、レッドスターフィールドで僕を待ち受けていた。
 ソウルフラワーユニオン。彼らは基本的に東名阪でしかツアーを行わない。北に来てもせいぜい仙台くらいまでだ。なので、札幌で生で見る機会はイベントかフェスくらいしかない。はじめからうつみようこがステージ上にいたのでちょっとうれしかった。伊丹英子は2,3曲目からの途中参加。「おおー、なんやちゃんと人、おるやん!」と、相変わらず自虐的なコメントをする中川敬。一時期、僕は彼のこういう物言いを嫌っていた時期があったのだけど、今では気にならなくなった。それは、この日のライヴがまさにそうだったように、彼らの音楽は今でも、ぱっとたまたま聞いただけの人をも巻き込んで強引にこちら側に引き寄せるパワーを持っているからだ。単なる負け惜しみではないからだ。「松葉杖の男」「うたは自由をめざす! 」そして、新曲の「ラヴィエベル 〜人生は素晴らしい!」で一気に会場を温める。陽が落ちてやや肌寒さも感じる気温だったが、ぎゅうぎゅうに詰まったステージ前ではちょっと踊ると汗だくになるほどだった。そして、続く「エエジャナイカ」ではその辺にいる、ぜんぜん知らない人たちとリングダンスしたり肩抱き合ってゆれたり踊ったりハイタッチしたり、もう頭空っぽで踊りまくっていた。なんだろうこれは。確かにフェス向きのバンドだとは常々思っていたけれど、ここまで会場が一体になってさらにその祝祭ムードをステージ上に還元するような、こんなエネルギーのある空間を感じたことはあまり記憶にない。2001年、『スクリューボールコメディ』を出した直後のフジロックでのステージがこんな感じだったかもしれない。「満月の夕」「荒れ地にて」でちょっと落ち着いたあと、「風の市」からは再び狂乱の宴の始まり。「ブルーマンデーパレード」で乾杯し、本編ラストは「海行かば〜」で最後の大暴れ。中川は「今日はこの10年の裏ヒットパレードで」と言っていたが、確かに、『エレクトロ・アジール・バップ』が出たのが96年で、それ以降のソウルフラワーの歩みを簡単に総括するようなライブベスト的な選曲だった。そして、モノノケサミットなどの活動も含めて身についたサバイバルライブ術と言うか、ライブバンドとしての基礎体力の違いが露になったような素っ晴らしいステージだった。こういうことをしてくれるからこのバンドのファンはやめられない。ステージから去ってもまったくおさまらない拍手歓声の嵐に、なんと再登場。「もうちょっとやってもええねんて」と、アンコールとして「こたつ内紛争」を演奏してくれた。最後の最後まで楽しませてくれた。ありがとう。間違いなくこの日の、そして今年のベストアクトの「ひとつ」と言いたい。もうひとつは、明日の感想で後述。

■SET LIST(SOUL FLOWER UNION
1.松葉杖の男
2.うたは自由をめざす!
3.ラヴィエベル 〜人生は素晴らしい!
4.エエジャナイカ
5.満月の夕
6.荒れ地にて
7.風の市
8.ブルー・マンデー・パレード
9.神頼みより安上がり
10.海行かば、山行かば、踊るかばね
<アンコール>
11.こたつ内紛争

 
 心底充足した気持ちでテントのほうに戻る。途中のスペースでは、毎年のように祭太郎が太鼓を叩きながら道行く人を若干立ち止まらせパフォーマンスを行っていた。今年も彼は元気だ。軽く腹ごしらえをしてからアーステントでBUCK-TICK。僕は『悪の華』とか『狂った太陽』のころ非常に好きでよく聞いていた。たぶん市川哲史氏の影響もあったと思う。彼らも早20年選手。これだけ長い間ただの一度もメンバー交代することなく一線で活動を続けているバンドと言うのも実はあまりいないだろう。最前列のほうでは僕と同世代の人もいたし、明らかに最近になってからのファンもいた。こういうバンドは、強い。櫻井敦司をはじめ、メンバーのルックスがまったく衰えていないことにまず驚愕。今井寿なんか金髪のロン毛で、まるで昔の少女マンガから出てきたみたいな佇まいだ。正直、ここ10年くらいはきちんと聞いていないので知らない曲も多かったのだけど、メロウなメロディーを聞かせるポップな曲から、シンプルなロックンロールから、打ち込みを前面に出したインダストリアルな曲から、雑多なエネルギーで盛り上げていく様は、とても40代のバンドとは思えないバイタリティーに溢れていた。櫻井敦司も上着を脱いでタンクトップになるなど、憎いくらいにグラマラスでセクシーでカッコいい。繰り返すけれど、なにこの年齢不詳具合。ていうかむしろ20年前より若返ってないか?ラストは「ICONOCLASM」、そして『狂った太陽』から「スピード」。大好きな曲が最後に来たのでうれしかった。
 今年は雨も降っていないし、稲川淳二の怪談でも聞きに行こうかとか画策していたのだけど、テントに戻って一休みしていたら眠ってしまった。仕事の疲れがこんなところに出たか。言いたかないけど、年齢はこういうところに感じるようになってきた。そして夜は非常に冷え込み、Tシャツで寝ていたら寒さで目が覚めるほどだった。そんな石狩の夜。