無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO(6)〜きらきら。

■2007/08/18@石狩湾新港

 TBHのあと、そのままサンステージに残留。セットチェンジの時間はサンステージに限らず、おおよそ30分程度なのだが、Coccoのときはかなり時間がかかった。予定よりも15分くらいオーバーしたと思う。待っている間、この夜一番の睡魔に襲われた。そんなこんなしているうちに東の空が明るくなってきた。朝が近い。

 沖縄でレコーディングした新作はタイトル通りきらきらと光を発していたCocco。真っ白いワンピースに裸足で登場した彼女は、その新作モードで、透明な歌声を夜明けの石狩に真っ直ぐに響かせていた。途中、昔の曲が演奏されたが、その時には逆にスイッチが切り替わったかのようにヘヴィーな情念を叩きつけるように歌い上げる。かと思えば「なんか時間かかっちゃってからさー、しゃべらないでっとっとと歌えって言われてるさー」、と愛嬌たっぷりの琉球なまりでMC。面白い人だなあ。今の彼女(と、曲)が醸し出している無垢な生命力は、ビョークのそれにちょっと近いかもしれない。「音速パンチ」からは再びスピードアップしてポップで、楽しく、明るく、柔らかで温かい新作モードに突入。歌詞も曲もどこか無造作でありながら、アレンジはそう聞こえないようにかなり気を使っているように見える。長田進を中心としたバンドの演奏も安定していたし、Coccoの全盛期がこれからやってくる予感に溢れていた。この時間帯にぴったりのステージだったと思う。昔の彼女なら、真夜中だったと思うけど。そういえば、ギターに元くるり大村達身がいた。Coccoの新作には参加していなかったと思うのでちょっとびっくり。相変わらずしなやかなストロークで長田氏のサポート的な役割をこなしていた。

■SET LIST(Cocco
1.燦
2.甘い香り
3.強く儚い者たち
4.樹海の糸
5.カウントダウン
6.音速パンチ
7.タイムボッカーン!
8.ジュゴンの見える丘
9.Never ending journey


 レジャーサイトやスタンディングもだいぶ人が減り、すでに会場を後にした人も多い。しかし、やや雲はあったもののきれいな朝日が昇り、最高の朝がやってきた。そんな中、今年のサンステージのトリを飾る曽我部恵一BANDが登場。会場は、彼目当ての人と、とにかく最後だから見ておこう、という人と半々くらいだっただろうか。8年前、記念すべき第1回目のライジングサン。あの時はステージもたった一つだったが、その時に朝日の中トリを飾ったのがサニーデイ・サービスだった。曽我部自身もそのことは意識していたようで、あの時のように気持ちよく皆が会場を後にできるようなステージをと考えていたそうだ。とにかく、気持ちいい朝の中、最後だし難しいことは考えずに楽しく盛り上がっていこう、という、その一点のみに焦点が絞られたステージだった。正直、ソロになってからの曲よりもサニーデイ時代の曲の方がリアクションがあったのは仕方ないところだと思うが、それでもきっちりとピースフルなムード満点のステージを全うした曽我部氏は偉いと思う。個人的に、「恋におちたら」とか「サマーソルジャー」とか、8年前にも同じ場所で聞いた曲をまた聞くことができたのは幸せだった。「テレフォン・ラブ」では「曲、知らなくてもいいから一緒に歌ってくれー!」と無理やりなコールアンドレスポンスで会場を一体にするなど、あの手この手でとにかく盛り上げるぞ、というハジケかたは昔の彼にはなかったものだ。演奏の良し悪しよりもとにかく音を出すことが楽しくて仕方がないという感じのバンドの雰囲気は見ているだけで笑顔になってしまうものだった。あとでnyoさんご夫妻が「曽我部恵一ってあんな人だったっけ?」と驚いていたが、ソロになってからのライブ漬けの活動で鍛え上げられたものだろう。アンコールにも応え、「LOVE-SICK」で会場を愛に満たし、今年の全てのステージが終了した。

■SET LIST(曽我部恵一BAND
1.恋人たちのロック
2.トーキョー・ストーリー
3.恋におちたら
4.テレフォン・ラヴ
5.キラキラ!
6.青春狂走曲
7.サマーソルジャー
8.Stars
<アンコール>
9.LOVE-SICK

 前にも書いたが、フェスの前後(そして今も)あまりの激務でまともに休むヒマもなかったのだけど、このフェスの間だけは心底幸せな気分になることができた。体力的にはきついが、逆にこれがなくなったらもっときつい生活になってしまうだろう。フェスとは非日常で、つかの間浮世の辛い生活から逃れて夢を見ることのできる幸せな空間なのだということを今年ほど実感した年はない。そして、今年ほどたくさんのステージを見て、しかもそのどれもが素晴らしい内容だった年もなかなかなかったと思う。そういう意味では、非常に満足だった。スタッフの対応が悪いとか誘導がなってないとかそんなのは何の問題でもない。フェスは「楽しませてもらう」のではなくて「楽しむ」ために行くものだ。誰が何をしてくれるわけでもない。手前のことは手前でしろが基本原則。何度も書いている気がするけど、フェスってそもそも不便なものだ。初期のRSRにはコンビニもATMもなかったのだ。スタッフだって小学校の運動会のPTA控え室みたいなテントでのんびりしていたものだ。でも何も不便と思わなかった。それが当然だったのだから。今は逆に至れり尽くせりで楽すぎとすら思う。物販で並ばされてどうのとか言ってる人は、基本的にフェスに参加する目的が僕とは違うのだろうとしか思えない。
 ただ、トイレの問題だけはいただけなかった。最も人の多いエリアで1基のトイレも使えないという大失態は、日本全国フェス多しといえども前代未聞だろう。WESSには猛省していただきたい。WESSの山本氏は「ライジングサンという町の住人として楽しんでください」というようなことを言っていたが、それなら町としての最低限のインフラやライフラインだけはなんとしても確保するべきだろう。ひたちなかみたいに会場の周りぐるっとトイレで囲うくらいやってみればいいのに。そしたら誰も文句言わないから。まあ、いろいろありますが、僕の札幌在住ロック聞きのアイデンティティとして来年以降も無条件参加し続けることは間違いないです。お疲れ様でした。また来年!