無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

バンドをころがせ。

CAVE PARTY(初回生産限定盤)(DVD付)

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 ザ・クロマニヨンズのセカンド。タイトルやジャケットのイラストから、地下の闇パーティーみたいなホラーチックなおどろおどろしいものを想像したのだけど、なんのことはないいつものヒロトマーシーのロックンロールでした。ちょっと肩透かし。肩透かしというのはしかしアルバム全体にも感じられる部分はあって。や、最高のロックンロールなのだ。全14曲ヒロトマーシー7曲ずつ。期待通りのものがここにはある。「ギリギリガガンガン」「東京ジョニーギター」のような爽快なロックンロールも、「むしむし軍歌」のような脱力系も、「メガトンブルース」「うめえなあもう」や「こたつねこ」のように言葉も意味も極端に削ぎ落とした曲も、「紙飛行機」の叙情性も、これまでヒロトマーシーがやってきたことの全てがいい形で詰まっている。良くないわけがない。しかし、ここには前作で全てを一旦リセットし、スタートラインに立ち返ってもう一回始めよう、というダッシュ感は無い。2枚目なのだから当たり前といえば当たり前なのだけど、ハイロウズに比べるとちょっとそれが来るのが早くないかと。しかしそれもまた当たり前のことだとは思うのだ。ヒロトマーシーにとっては何回目かの2作目なのだから。
 初期衝動などというものは文字通り「初期」ならではのものなのであって、それがいつまでも永遠に続くなどというものではない。いろいろな経験を経て突き動かされるような感覚が蘇ってくることはあっても、それは初期衝動とは違う。クロマニヨンズというバンドにとっての初期衝動は1枚目でやりつくされている。あの勢いをここでも続けていたら、それはもう今で言うKYになってしまう。続けていく以上、新たな衝動をもってバンドを転がしていかなければならない。ヒロトマーシーの場合、そういうことを論理的に考えることはしないだろう。したとしても、それを語ることは無いだろう。彼らが一貫して素晴らしいのは、続けていくモチベーションを燃やすためのガソリンが常に音楽への愛情と楽しさであるところだ。そこがぶれていない人たちが作ったセカンドアルバムだな、という気がする。本当に頭空っぽで何も考えていない人たちからは「夢の島バラード」や「レフュージア」のような曲は生まれてこないと思う。