無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

仲良きことは美しき哉。

新人

新人

 昨年末、「THE 仲直り」と題し、8年ぶりの復活を遂げた筋肉少女帯(以下筋少)。一時的な復活ではなく、永続的な活動継続を本人たちも発言してきたが、その通り新作が発表された。めでたいことである。ドラムの太田明氏がいないので厳密には90年代の黄金メンバー復活、ではないが、大槻・内田・本城・橘高の4人が揃っただけでかつてのファンとしては感涙ものだし、三柴理(江戸蔵)氏も全面参加し同窓会という様相を呈してもいる。橘高氏の早弾きソロも(ついでに言えばルックスも)衰えていない。
 「イワンのばか」「モーレツア太郎」のセルフカバーは80〜90年代からのファン向けのサービスかと思うが、それ以外の新曲群で個人的にこれは!と思ったのは「ヘドバン発電所」という曲。遠い瓦礫の地の闇の中、本を読む少女のために世界中のヘッドバンガー達が立ち上がり、首に電極をつけ頭を振り、その少女のために電気を灯すというストーリーだ。ヘッドバンガー達のおかげで少女は本を読み終えた。しかし、彼女が読んでいたのは独裁政治・歴史改竄主義・陰謀史観悪魔崇拝主義を啓蒙する禁断の書物だった―。というオチ。この暗黒で救いのないユーモアこそ筋少である。「トリフィドの日」や「交渉人とロザリア」〜「愛を撃ち殺せ!」のストーリーも、オーケンらしい世界観が良く出ている。もう少し昭和日本文学的な暗黒面があるともっと良かったのだけど、その辺は次作に期待。復活テーマ曲と言える「仲直りのテーマ」と、自ら再結成を自虐的に捉えた「新人バンドのテーマ」は彼らなりの照れ隠しとも言える曲だが、逆にこの復活にかける彼らの意気込みを感じるようでなかなか胸に来るものがある。
 そもそも「仲直り」である。古今東西バンドの解散や再結成は数あれど、「仲直り」を理由にした復活というのはあまりお目にかかったことがない。本当の理由がそうだったにせよ、表向きには何か違う理由を掲げるだろう。40過ぎたオッサン4人が「仲直り」で再び同じステージに立つ、というこのドラマの重さは、筋少ファンだからということを抜きにしてもグッと来る。様々な理由で袂を分かったかつての戦友/盟友が時を経て再び同じ道を歩むというのは言うほど簡単ではないし、相当の覚悟が必要なはずだ。照れ隠しに自虐的に笑い飛ばしたくなるのもわかる。とにもかくにも彼らは仲直りした。それを本人たちが良かったなあ、と思って楽しそうに演奏しているのが何よりもうれしい。