無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

エイミーはお年頃。

Back to Black

Back to Black

 UK出身の歌姫。全身タトゥーにアルコール、ドラッグとスキャンダル・ゴシップのネタにも事欠かないダーク・ディーヴァ。そんな一般的なイメージはともかく、このアルバムの彼女の歌唱は圧倒的だ。50〜60年代のR&B・ジャズボーカルを標榜するアレンジがとにかく素晴らしい。プロデューサー陣の仕事が完璧なのだと思う。レトロ趣味で無理矢理こういう音にしているというより、彼女の歌に合わせてアレンジしたら自然とこの時代の音になったというくらいの説得力がある。この声のキャラクターはすごい。その歌唱とアレンジと楽曲の良さとが高いレベルで結実した「ティアーズ・ドライ・オン・ゼア・オウン」は特に素晴らしい。珠玉。
 ドラッグのリハビリ施設に行けといわれたことをそのままヒットシングルにしてしまったり、夫との関係を赤裸々に語った曲がタイトル曲だったりと、私生活をまんま切り売りするような曲の書き方をポップフィールドで展開するのは、ジャンルは違えどエミネムとの共通点も感じる。女だからってバカにすんじゃないわよと、裸一貫でもサヴァイヴして見せるわという生命力の強さ。一筋縄では行かない蓮っ葉さが人をひきつけるのだろう。これでまだ23歳。どこまで濃い人生なんだ。