無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

友達になりたいロックスター1位。

Echoes Silence Patience & Grace

Echoes Silence Patience & Grace

 いろんなところで言われていることなのでいまさらなのだけど、デイヴ・グロールという人の音楽的才能とスキルというのはメチャメチャ高い。フー・ファイターズをやる前は単にニルヴァーナの凄腕ドラマーという認識だったので、ギターも弾けて歌も歌えて曲も書ける、しかもそのどれもが1級品という事実に当時は正直驚いた。そして、そのスキルは作品を重ねるごとに上がっている。加えて、現在のフーファイのメンバーは結成以来最高と言っていい。バンドアンサンブルの練られ方も文句のつけようがない。デイヴにとっては自分の頭の中にあるサウンドを具現化するのに現在のフーファイ以上のものはないというくらいのレベルに達しているのではないかと思う。
 前作『イン・ユア・オナー』はロック・サイドとアコースティック・サイドを両極に分けた2枚組だったが、今回は一言で言えばそれを1枚に凝縮したようなアルバムになっている。それも、曲ごとにこれはアコースティック、これはラウドなロック、のようにパキッとと分かれるものではなく1曲の中に両方の要素が混ざっているものも多い。前作で自分たちの可能性が更に広がったわけで、それを突詰めた結果のアルバムと言う感じなのだろう。アコースティックな味付けでしっとり聞かせたり、ストリングを入れたアレンジを施したり、ロックの世界では既に当たり前になっていることではあるが、いいメロディと上手い演奏と優れたアレンジセンスがあればこれだけ奥行きのある音楽になるのだと驚かされる。フーファイのアルバムとしては現在までの最高傑作、と言ってもいいのではないか。個人的には僕は2枚目が好きなのだけど。
 僕が諸手を挙げて最高と言えないのは、中盤やや中だるみ感が感じられるから。アコースティックな要素が若干多い気がして、サウンドとして優れてはいるけれども退屈な部分も出てきてしまうのだ。新しいおもちゃを与えられた子供のように、自分の前に新しい音楽的な可能性が生まれた以上それをやりつくさないと気がすまない、のかもしれない。それもまたデイヴ・グロールの人間臭さか。それがあるから好きなんだよね、とも言える。