無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

すくすくすくすく。

生命力

生命力

 2年目のジンクスならぬ2作目のジンクス(?)などものともしない、チャットモンチーのセカンド。1枚目も良かったけど、これを聞くとさすがに肩肘張っていたのかなと思ってしまう。メロディーやアレンジの幅も格段に広くなった。曲調もバラエティに富んでいて聞いていて飽きないし、それでいてとっちらかっているわけでもない。どの曲も中心には3人のバンドアンサンブルがしっかりと核を成しているからだ。これだけいろいろなタイプの曲をチャットモンチーとして消化できるくらいに彼女らが進化しているということだ。無理に背伸びしている感じもなく、伸び伸びと、生き生きとした演奏が聞ける。タイトル通りのアルバムだと思う。
 そして成長の跡が最も見えるのは歌詞。前作までは徳島時代の曲がほとんどだったため、デビュー以降の彼女らの状況を反映したような内容はあまり見られなかった。しかし今作では徳島から上京し、東京で生活するようになった地方出身の20代女性の視点で書かれた詞が多い。特に高橋久美子作の「親知らず」なんかは故郷と家族に対する望郷の念と、遠く離れた地で一人で生きる決意を感じさせる内容で、いい。福岡晃子の詞はラブソングが多いが、中には「世界が終わる夜に」のようにメッセージ性の強いものもある。それも、世間に何か物申すというものではなく、あくまでも生活の中から出てくる違和感の延長という感じで、非常に自然体だ。思うに今作での歌詞の進歩というのは上京してきた彼女らが東京での生活に慣れていく中で人間として自立し、成長していく過程と歩を合わせるものなのだという気がする。そういう意味では、今回橋本絵莉子の詞が2曲しかなく、そのいずれもが徳島時代からある古い曲だったというのはやや残念だ。他の二人の作品が良かったということもあるだろうし、特に彼女が書けなかったというわけではないと思うのだが、前述の意味で、橋本の上京以降の人間的成長がどう詞に反映されるのか、次作以降に期待したい。
 前作の感想にも書いたけど、チャットモンチーがいいのは今の時代に若い人がバンド組んだらこういう音を出したいだろうなという音を一直線に目指しているところだ。橋本のギターの音なんかストロークが軽くてもサウンド自体は結構重いし(かなりいい音だと思う)。男女関係無く、これからバンド組もうという中高生なんかに絶対影響与えていると思う。