無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ポロシャツで世界は変わる。

monobright one

monobright one

 monobrightのメジャーデビュー作。メンバー全員白ポロシャツ&メガネといういでたちと、札幌出身ということで注目してインディー盤を買ったのだけど、ボーカル桃野陽介の変態性に一気に持っていかれてしまった。彼の書く曲のほとんどは、抑圧された若気の至りと妄想を強引にネガポジ変換し爆発させたものであり、その爆発具合がかなりエキセントリックであることが大きな個性になっていると思う。今の若いバンドの多くがスマートに音楽を作っているのに対し、monobrightは編成こそオーソドックスだが、サウンドはかなり歪だ。どこかネジの外れた曲展開と奇妙なギターソロ。モテない高校生が家でマスかく代わりにギター弾いていたらこんな曲ができました、みたいなイカ臭さにあふれている。しかしその分、歌詞の内容は意味不明で支離滅裂ではあるが非常にピュアだと思う。
 曲の多くはミディアムテンポだが、それが全く退屈せずにロックの魅力に溢れているのは安定したバンドアンサンブルと桃野のボーカル力によるものだと思う。曲のテンポが遅い上に言葉が少ないということは音符の間をボーカルが伸ばして埋めていかなくてはならないのだけど、彼の声は単に伸ばすだけでなくそのロングトーンの間に様々な感情を乗せることができる。同じ力を持つボーカルというと奥田民生がまず考えられるが、桃野もこの点においては間違いなく民生の域にいる。メロディーもよく聞けばポップなものが多い(「魔法のライター」マジでいい曲だ)のだけど、全体として非常に奇妙なロックとして成立しているのが面白い。どうしても言葉で説明できないような青春の衝動をギターで爆発させるようなロック、久々に聞いた。小さくまとまらずに異物でい続けて欲しい。