無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

健全なエモは健全な精神に宿る。

Chase This Light

Chase This Light

 3年ぶりとなるジミー・イート・ワールドの最新作。前作『フューチャーズ』は内省的なムードを持つアルバムだったが、今作では『ブリード・アメリカン』以来のキラキラしたメロディとはちきれるようなサウンドを聞くことができる。元ガービッジのブッチ・ヴィグがエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされているが、実際のプロデュースはエンジニアのクリス・テスタとともにバンド自身が行ったようだ。アグレッシブなバンドアンサンブルの、彼ららしい曲もあれば打ち込みを使った曲もある。ジャケット通り、非常にカラフルなアルバムだと思う。
 彼らはいわゆる「エモ」と呼ばれるジャンルの元祖と言われるが、僕自身は「エモ」という曖昧な単語の意味するところは正直よくわからない。ただ思うのは、単純にサウンドやメロディーの感触で決まるものではなく、その音楽が生まれた精神性にこそその本質が宿るものだろうということだ。本作に収められている曲は全て、彼ら自身の人生とその経験から出てきたものであり、それをセルフプロデュースに近い形で作り上げるDIY精神こそがJEWの魅力であり本質だと思う(今作ではメンバーの家族がコーラスにも参加している)。そういう意味でJEWがエモの元祖であると言うのなら、納得できる。