無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

極点。

EXPOSED

EXPOSED

 ブンブンの新作。これは・・・カッコイイ。なんだそりゃ、って感想だけど、まあこれは事実なのでしょうがない。『FULL OF ELEVATING PLEASURES』『ON』と続いた歌モノロック路線の集大成と言っていいのじゃないだろうか。インストも終盤に2曲収録されているけれども、クライマックスの「EASY ACTION」とラスト曲を盛り上げるための演出的な要素が強いし、全体としてはそこ以外にビートが緩む瞬間がない。全編これ超強力なビートとサウンドの洪水のようなアルバム。こういう高密度なアルバムを通して聞くと大抵はどっと疲れてしまったりするのだけど、今作は一気に聞ける。12曲42分というコンパクトさが大きな要因だが、それはつまり無駄な部分が徹底的に排除されているということ。聞いていて高揚する、アガる、そのために必要なサウンドのみを純粋抽出したようなハイテンション・ロック・ダンス・アルバムになっている。
 彼らの音楽は現状の自分らを取り巻く世界のムード(もっと小さく言えば音楽シーン自体)に対する強烈な違和感があり、それをどう打破しようか、どう周りをそれに向けて鼓舞しようか、という意思を持っていると思う。しかし、特に『UMBRA』や『PHOTON』の頃に顕著だったけれども、そういう意識が内省に向かいすぎてしまうと音楽としての機能性をスポイルしてしまう。結果、ダンスミュージックとしてもロックとしても居心地が悪い感じになっていたとも思う。それが外に向いて行ったのがこの数年の彼らだったと思う。しかしそれでも、彼らが一音一音に込めた高い意識というのは『UMBRA』の頃とは変わっていないと思うのだ。アウトプットとして今は開かれたものになっているというだけのことだと思う。
 一昨年くらいからロックとダンスの融合みたいなキーワードが再び語られるようになってきた気がするけど、ブンブンがそこに括られることはなかった。そもそも彼らはデビュー時からずっとそれをやってきたのだし、彼らが強力なビートを欲するのもロック的なサウンドを希求するのも単なる快楽性の他にそうでなければならない理由があるからなのだ。3部作、と言ってしまっていいのかわからないが、『FULL OF〜』以降今作に至るまで、その独自性と他の追随を許さないサウンドクオリティでロックとしてもダンスとしても揺るぎないポジションを作ってしまったと言っていいと思う。ここまで行ってしまったら、次はどうするんだろう。これ以上のものがこの先にあるんだろうか。そんな余計な心配をしてしまうほどにこのアルバムは完璧なフォルムを持っている。