「合唱なめてんじゃねぇぞ!」は確かにそう思う。
■うた魂♪ http://utatama.com/
■監督:田中誠 出演:夏帆、ゴリ、薬師丸ひろ子、石黒英雄 他
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ストーリー的にはモチーフが合唱でなくとも成り立つようなある種オーソドックスなものなので、重要なのはクライマックスに至る説得力を持たせるために劇中の「合唱」そのものがどこまでちゃんと描かれているか、ということになる。かすみのいる七浜高校というのは全国常連の合唱強豪高、という設定なのだけど、聞いてみると正直言ってこれだと全国は無理だよなー、というレベル。でもまあ、出演者が皆練習してきちんと歌っているという点ではえらいと思うし、どれくらい練習したのかわからないけど素人が急増で作った合唱団にしてはかなりがんばっていると思う。ガレッジセールのゴリ(いくらフケ顔のヤンキーといっても高校生はさすがに無理あるな)率いるヤンキー高の男声合唱は、まあぶっちゃけクラス合唱。劇中では「あんな野蛮な発声なのに、魂がビンビン伝わってくる!」みたいな描き方をしてたけど、それだけではちょっと厳しい。ゴリの台詞で「歌は技術じゃない、ハートだ」みたいなのがあったけど、個人的にはハートをきちんと聞き手に伝えるためには最低限の技術と言うのはやっぱり必要だと思うのです。そこが抜け落ちているのはちょっと残念だけど、まあこれは人によって意見が分かれるところでしょう。
クライマックスのコンクールはステージの雰囲気からしてNHK全国学校音楽コンクールを念頭に置いたものだと思うけど、とりあえずコンクールで尾崎豊はないよね(笑)。演奏会ならともかく。他校の演奏シーンで昨年の全日本の課題曲(Grieg)とか千原英喜の曲とかも一応おさえてたけど、だからこそ主人公たちのステージがポップスというのはバランス悪い。ここで鈴木輝昭とかやられても確かに商業映画としては盛り上がらないとは思うんですが。木下牧子、信長貴富あたりならアリかな(もちろん曲によるけど)。クライマックスの感動は実際合唱やっている人なら少なからず同じような経験をしたことがあるとは思う。なので、フィクションとして作るならもっと極端にドラマチックなことやってもよかったかもしれない。あと、函館が舞台なんだけどどう見ても北海道じゃなく内地の夏の風景だったのが気になった。こういうディテールって、ストーリーには直接関係なくても全体の印象にかなり影響する。脚本的にはゴリと薬師丸ひろ子の過去の伏線がちょっと物足りなかった。全体に薬師丸ひろ子の役柄がどういうキャラなのかよくわからないというのもあるけど。青春映画としてはまあまあ及第点だと思うけど、細かいところはツメの甘さが目立つ。
で、例えば「スウィング・ガールズ」でブラスバンドが注目されたように、この映画を見て合唱に興味を持つ若い人がどれだけいるかな、というと正直微妙かもしれない。合唱ってダサいもの、みたいなイメージは一般的にやっぱりあると思うんですよね、若い人だと特に。主人公に敵意を向ける女子高生グループが「待ちぼうけ」歌ってる演奏を見て「合唱って民謡とかワケわかんないの歌ってさー」みたいな台詞があったけど、まさに。だからと言ってゴスペラーズや尾崎になったからいいだろうというものではないと思う。取っ掛かりとしてはそれでもいいのだろうけど。ただ、合唱というのは文化系の活動ではあるけれども、チームプレイであり且つ体育会系的で熱血な側面もあるという点がきちんと描かれていたところはGOODでした。
合唱やっている人間がクラシックとか合唱しか聞いてないなんていうことはあるワケがなく、特に高校生とかなら普通にJ-POP聞いてたりするだろう。そういう、普通の子が熱く合唱やっているってところに個人的にはグッと来る。高校のコンクールだとたまにメイクケバかったりスカート短い女子高生とか、ズボンずり下げてる男子とかいたりして、そういう子が合唱やってると嬉しくなる。なので、この映画を見てピンと来た方は高校生に限らず合唱やりましょう。(すでに映画の感想じゃない)