無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ひとりごと(余計なお世話ver.)

■BUMP OF CHIKEN 2008TOUR「ホームシップ衛星」
■2008/04/19@北海道立総合体育センターきたえーる
 バンプの新作に伴うツアーは、前半が「ホームシック衛星」と題したライヴハウスツアー、後半がこのアリーナツアーとなっている。前半でも北海道に来ていたが、帯広旭川だったのでさすがに行けず。会場のきたえーるは2000年にオープンした総合体育施設。雰囲気としては代々木体育館を新しくした感じと言えば分かる人も多いかも。アリーナ(要は体育館だが)と、周囲の椅子席を全部ひっくるめて1万人くらいは入ると思われる。アリーナはかなり細かくブロック分けされていて、ステージに向かって前後に6〜7列、左右で3列くらいあった。ステージ後ろには大きなスクリーンがあり、左右には小さめのものが設置されている。オープニングはそこにCGアニメーションが映し出された。『orbital period』のジャケットにもなっている「星の鳥」が宇宙を飛び、地球?に到着するというもので、かなりきちんとした作りになっていた。SEは当然、「星の鳥」。デジタルの数字がだんだん増えていき、「28」になったところで止まり、ライヴがスタート。
 「メーデー」「才悩人応援歌」と、新作からの曲で始まったが、会場の音がかなり悪い。僕はE-2ブロックというところで結構後ろだったのだけど、低音がぼわんぼわんとこもって響き、高音もスカスカで全体の音像がぼやけてしまっている。この音の悪さに慣れるだけでかなりのパワーを使ってしまった(要は、あんまり集中できなかった)。新作が中心のライヴではあったのだけど、序盤でいきなり「LAMP」と「アルエ」を演奏するなど、かなり懐かしい曲もちりばめられていた。28年という公転周期を藤原が自力で発見したことと、彼らがそのアルバム制作中に28才になったという偶然がアルバムとこのツアーのテーマのひとつになっていることは間違いない。自分たちの人生が28年という周期をひと回りしたこととリンクさせ、デビュー以来の道程を再確認するような、そんなセットリストだったと思う。しかし、そのことによって『orbital period』というアルバムにあった大きな物語の流れとうねりがあまり感じられなくなっていたようにも思う。「arrows」「飴玉の唄」あたりが本来ならばもっと大きな感動の中でクライマックスとして機能するべきだと思うのだが、意外とあっさりしていたという印象。むしろ「天体観測」での熱狂と、「supernova」での会場内大合唱がピークとして演出されていた。「arrows」の演奏はアコースティックギターのフレーズも淀みなく演奏されていたし、ボーカルも良かった。それだけに、これをもっと盛り上げたところにおいて欲しかった(それでも、しっかり涙腺破壊されたけど)。
 本編ラストは「カルマ」。え、もう終わり?て感じだったので当然アンコール。「くだらない唄」「K」(!!)「ダンデライオン」という、人気の高い曲をアンコールに持ってきた(藤原は、「K」と「くだらない唄」の順番を逆にして歌い出してしまったそうだ)。2度目のアンコールに登場した彼らは、バンド結成して最も初期の曲「DANNY」をラストに持ってきた。やはり、前述のようにバンドの歴史を総括して新たな周期に突入しようという意図があったのだろう。が、僕にはやや昔に寄り過ぎた内容になっていた気がする。そして昔の曲の方が盛り上がってもいたような気もする。『orbital period』って本当にいいアルバムだと思うんだけど。
 会場にいたファンは非常に若く、中高生かせいぜい20才前後が大半だと思う。そういう彼らは、もしかしたら『FLAME VAIN』や『THE LIVING DEAD』をリアルタイムで知らない世代なのかもしれない。しかし、そういうファンにも初期の曲は当時中高生だったファンがそれを受け取ったのと同じ共感を持って受け入れられていると思う。それはこの日古い曲にかけられた大きな歓声からもわかる。しかし今のバンプ・オブ・チキンはかつての彼らと基本的に同じ視点で曲を作ってはいても、その内容はもっと深く複雑になり人間とは、人生とは、生とは、死とは、その尊厳とは、というところまで踏み込んできている。それを、あの場にいた若い人たちはきちんと咀嚼できているのか?実は、バンドと同じかそれより上の世代だけが今のバンプを喜んで聞いているんじゃないのか?という気にすらなってしまった。
 今後藤原の作る曲は今よりももっとそのテーマを深く掘り下げたものになっていくだろう。しかし、彼らがかつて作った曲がこの世に存在する限り、いつの時代も若いファンが新たに彼らの音楽に魅せられていくと思う。僕が感じた違和感は、さらに大きくなってゆくのではないだろうか。ただ、バンド自身はどんなに初期の曲でも「今の」自分たちの曲として演奏していたように見えた。それは大きな救いだった。そこがブレない限りは、大丈夫、と思うんだけど。

■SET LIST
1.星の鳥(SE)〜メーデー
2.才悩人応援歌
3.LAMP
4.アルエ
5.ハンマーソングと痛みの塔
6.ひとりごと
7.ギルド
8.花の名
9.arrows
10.飴玉の唄
11.真っ赤な空を見ただろうか
12.かさぶたぶたぶ
13.ダイヤモンド
14.天体観測
15.supernova
16.星の鳥reprise(SE)〜カルマ
<アンコール1>
17.くだらない唄
18.K
19.ダンデライオン
<アンコール2>
20.DANNY