無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

弱くたっていいじゃないか。

Antinomy

Antinomy

 BRAHMAN約3年半ぶりの4枚目。相変わらずインターバルが長いが、3〜4年周期でしっかりアルバムが出ているのを見るとこれがこのバンドのペースなんだろう。音楽的には大きな変化はなく、民族音楽的な要素をフィーチャーしつつパンク、ハードコアなどの音楽を消化した独自の世界を追及しているが、今までよりも緩急の付け方が絶妙になってきたという印象を受ける。
 BRAHMANというバンドは、とにかく強く、強靭にあらねばならない、というような意識をバンドのスタンスとしても音としても持っていたような気がする。しかし、最近では歌詞にしてももっと人間的な弱さや葛藤のようなものを前面に出したものも増え、一直線に突き進む的なイメージからは変わりつつある(少なくとも僕の中では)。それは歌詞を書いているTOSHI-LOWの考えが反映されているものだとは思うが、その変化はどこから来たのだろう。いろんな意味を含めて言ってしまえばおそらくは年齢を経たということが大きいのではないだろうか。結成から10年以上が経ち、メンバーも30半ばになろうかというバンドである。ライヴの激しさは相変わらずだが、肉体的な衰えを感じることもあるに違いない。結婚したり子供ができたりしたメンバーもいるし、人間として様々な経験をした上で猪突猛進的に強さを追い求めることが難しいと感じたとしても不思議はない。もっと言えば強さとは何かという話になるわけだが。悩んだり葛藤したり、その結果以前の自分とは違う道を選んだり、矛盾したり、間違えたりしながらも、そういう自分を認めること。カッコ悪い自分をさらけ出すこと。それもまた強さなのではないだろうか。今のBRAHMANには、そんな強さを感じる。
 あと、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下OAU)の活動もBRAHMANのサウンドに少なからず影響を与えているだろう。BRAHMANでできないことをOAUでやるという単純な図式ではなく、両者はもっと複雑に絡み合ってきているような気がする。当初ならこれはOAUでやるべきことでBRAHMANではナシみたいな線引きが明確にあったと思うのだけど、今はもう少し曖昧なんじゃないだろうか。それもまた本作の懐の深さに繋がっているように感じる。