3分で世界は変わる。
- アーティスト: ASIAN KUNG-FU GENERATION
- 出版社/メーカー: キューンレコード
- 発売日: 2008/03/05
- メディア: CD
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今作でも基本的にそのテーマは失われていない。しかし、1人称の物語だけではなく、客観的なストーリーを用い、また現実の世界に対する彼らの現状認識(かなり暗いが)を交えることで、非常に外側に開かれた印象を与える作品になっている。全13曲44分というコンパクトさもきちんと通して聞いてもらうことを意図してのものだろう。アルバムタイトルや曲名にある「ワールド」「世界」にはいろいろな意味が込められているのだろうが、基本的には自分の内面の世界と外の現実世界の対比がそのテーマになっていると思う。特に「転がる岩〜」から終曲「新しい世界」の流れはいい。「転がる岩」とは当然、彼ら自身が魅せられたロックンロールそのものを指している。それによっていかに自分の世界の変化が起き、殻を破って外の世界に走り始めたのか。それによって目の前の世界がどう塗り替えられたのかを非常にストレートに歌っている。「出来れば世界を僕は塗り替えたい/戦争をなくすような大逸れたことじゃない/だけどちょっとそれもあるよな」というフレーズは決して大言壮語ではなく、そのくらいドラスティックな変化がかつて自分自身に起きたのだ、という実体験から出て来るものだ。その上で叫ばれる終曲の「新しい世界」という言葉にはかつてない確信と説得力が宿っている。そして、アルバムが一回りし、また最初から聞き始めると聞こえてくるのは「僕らはまだ何もしていない」なのだ。だからまた、殻を破るために、目の前の景色を塗り替えるために何度でももがくのだ。ロックというのはそういうものだ。
アジカンは彼らがロックから受け取ったものを、生真面目に還元してファンやリスナーに返そうとしている。いわばロックの食物連鎖。言うは簡単だが、それは壮大な野望だと思う。しかしこのアルバムで彼らはその一端に触れることは出来たんじゃないかと思う。