無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

計算通り。

Dopamaniacs(初回生産限定盤)

Dopamaniacs(初回生産限定盤)

 ドーパンの新作。これがまた、えっらいカッコいい。例えば、そんなに車には興味がないという人でも最新のスポーツカーとかF1マシンとか見ると「カッコいい」と思うとか、そういう意味での「カッコいい」音が詰まっている。こういう音になっているのはなぜかというと、Furukawaという人が「カッコいい」音をを作りたくて、聞いた人に「カッコいい」という感情を喚起させたくて作ったからだ。結果、この音は見事にその目的を果たしている。
 Furukawaという人は多分、数学的、理系的に音を構築していくタイプのミュージシャンなのではないかと思う。完成形を見据えて、そこに至るのに必要な要素を足したり引いたり掛け合わせたりして、一つ一つ納得の行く形に仕上げていくと言うか。打ち込みのダンサブルなビートも、その計算のために必要なのだろう。何が起こるかわからないバンドマジックよりも、自分の頭の中の計算を信じているのではないかとすら思う。決してこれは否定的な意味ではなく、これだけハイパーでサイバーチックなダンス・ミュージックをバンド形式でやろうと思ったらここまで突き詰めないと無理なんだろう、という尊敬の念すら覚えるのだ。基本的にはオタク気質のミュージシャンなのだと思う。ギターのカッティングもソロもいちいち上手いし、ベースもドラムも機械のビートに合わせることは当然で、そこから肉体的なグルーヴを力技で作り上げるようなしたたかさがある。サウンドの完成度は文句なし。
 基本的に英語で書かれた詞は、歌詞カードにご丁寧に日本語訳もついているのだけど、はっきり言ってあまり意味のある内容ではない。日本語で歌われていたら逆に「で?」と言いたくなるようなものだ。サウンドでやりたいことは基本的に出し切ってしまっているのだと思うので、言葉はその邪魔をしなければいいくらいのものと割り切っているかのようだ。そんなんだったらインストでやれよ、と言う向きもあろうが、きちんと歌モノとしてポップスの土俵に乗せたいので言葉がないといけないのだ。こういう計算高さがいいと思う。音楽の機能性の高さに全部つながっている。(ちなみに全部個人的な想像なので事実かどうかは知りませんけど。)