無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ポップ≒アート。

Bondage Heart(初回生産限定盤)(DVD付)

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 フルカワミキのソロ2作目。ナカコー、勝井祐二はじめとするバックの面々はほぼ固定されていて、前作よりもバンドっぽいサウンドが志向されている。曲も数曲ナカコーが作曲している以外はは全て自身の作詞作曲によるものになっている。ソロ・アーティストとしての着実な進化を感じさせる内容になっている、とは思う。
 しかし、全体に感じるこの地味さは何だろう。アーティスティックな意味では良作だと思うのだけど、マスにアピールするキャッチーさという点では決定的にあと一歩欠けている。「B.B.W.」「La La La」などポップな曲はあるし、昨年のシングル「サイコアメリカ」のようにハードで耳を引く曲もある。でも全体に流れるムードは非常に気だるく、退廃的なヨーロピアン・ポップロックという印象。彼女の作るメロディーの多くがそういう雰囲気なのも大きな要因だろう(簡単に言えば、抑揚が少ない)。本人の意思なのだろうけど、個人的にはもう少しキラキラした部分があってもいいような気がする。彼女の声とこのサウンドの感触が完全にマッチしているか?という点でも若干の疑問は残る。
 音楽だけでなく、さまざまなフィールドで活動している人だけども、音楽がその中でも大きな部分を占めていることには変わりないと思う。だからこそこういう極端とも言えるアプローチになっているとも思うし。ポップと芸術性というのは決して相反するものではないし、むしろ崇高な芸術というのは総じてポップなものじゃないかとすら個人的には思う(概念的な話ですが)。一人立ちしたアーティストでいたいという彼女の意思は強く感じるが、その中でちょっと遊び心を見せるくらいの心の余裕がほしい。