無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO(1)〜雨にぬれても

■2008/08/15@石狩湾新港
 8月15日(金)石狩市の天気・・・雨時々曇り。来たよこれ。また今年も。前日夜から札幌市内でもしとしとと降った雨は朝には止んでいたが、雲は黒く厚く今にも振り出しそうな気配。気温もそうは上がらないようだ。またかと思う気持ちをよそに車で会場に向かう。ここ数年毎年初日は天気が悪いので精神的にもだいぶ免疫ができてきた。いまさらフェスで雨に当たって動揺することもない。それでも晴れてくれた方がいいことに変わりはない。駐車場の案内と誘導に惑わされて、会場から遠いエリアの駐車場に入ってしまったので入場の列に並ぶまでにえっらい歩かされてしまった。来年は誘導のおっちゃんと看板を無視して絶対に近い駐車場に直行することを嫁と誓う。列に並んだのは開場の30分前くらいなのだが、このあたりで雨がぽつぽつ落ち始めた。一時止んだりもしたのだけど、かなり強くなってきて、さすがに雨合羽を着ないとどうにもならないほどに。予報では午前中雨で午後からは曇りだったのだけど、そんな気配もなく降り続ける。そして開場からかなり時間が経っているにもかかわらず入場の列は一向に進まない。なにこれ。去年でもこんなに待たなかったよ?雨が降りしきる中約2時間待ち、13時ちょっと前になってようやく会場に入ることができた。この手際の悪さにはちょっと閉口。だいぶ予定が狂いました。

 テントサイトの引き換えはあっという間に終了。しかし今年ウチのテントは会場の最も奥のエリアなのでここからまた相当歩く。エリアについた頃にはくたくただが、しかしこれからテントを張らなくてはならない。しかも雨はまだまだ降り続けているので一刻も早い作業が必要だ。夫婦協力してテントを張り終えたが、テントの中にも若干水が入ったし、すでに荷物もかなり濡れてしまった。替えのTシャツやタオルも相当湿っぽい。午後になっても雨は止む様子はないので乾くわけもない。とりあえずこれ以上濡れないようにするしかない。書いていてもだんだん凹んでくるが、雨の強さとしても10年で最も悪い状況だったと思う。そして終わってみてから考えるとこの、テント張ってた時が一番雨が強かったんだよね。スタートからいきなり出鼻をくじかれまくり。テントで一服してびしょ濡れの服を着替え、時刻はすでに14時。とにかく気を取り直して15時開演のオープニングアクトに間に合うよう、まずは食事。雨が降っていて気温も上がらない中、それでもフェスに来たらビールを飲むしかないのである。ロコモコ丼とビール。ビールの中にどんどん雨が入っていくので早く飲まないと味が薄くなりそうだった。メシにも雨が入るのでとにかく濡れないうちにかきこむ。記念すべき10回目のライジングサンは同フェス史上最悪の雨の中、幕を開けた。


 嫁はドーパンに行ったが、僕はくるり三柴理が鍵盤で参加しているという新バンドがどういう音なのか、そしてもしかして聞けるであろう新曲がどうなっているのかものすごく興味があったからだ。もうひとりのギタリストとして内橋和久氏(最近ではUAとアルバムを作ったりもしてたギタリスト)を迎え5人編成のバンドで登場。そういえば、サンステージの登場時SEがブランキーの「古い灯台」だった。10回目ということで原点回帰?なのかな。昔からの参加者には懐かしかったですね。1曲目は「ワンダーフォーゲル」。雨の中、とにかく音楽を楽しみたいという思いだけで渇望していた観衆は一気に沸騰したような騒ぎ。3曲目に、いきなり新曲。すでに配信されている「さよならリグレット」を除いてもう1曲新曲をやったが、かなりどっしりとした音。メロディーにはところどころ歪な部分もあるのだけど、バンドとして全体のサウンドが全く矛盾なく立体的に組みあがっているような印象で、総体としての音楽の体積が一段階アップしたような感じ。こういうモードで新曲が作られているのだとしたら、地味かもしれないけどすごくいいアルバムができそうな気がする。内橋氏のギターは時にノイジーに時にブルージーに、自在に曲の世界を広げる触媒のような渋い味わいのあるものだった。彼が参加するライヴは夏の間の何本かだけみたいだが、そのうちのひとつを見ることができたのはラッキーだったと思う。「ばらの花」のイントロでは三柴理のエレピがあの印象的なフレーズを鳴らし、それだけで体の底から興奮してくる。だって三柴江戸蔵だぜ。エディだぜ。これだけでも十分満足だったんだけど、最後に「東京」をやってくれた。この曲は発表当時の自分の境遇にずっぱまりだったこともあって個人的にすごく思い入れのある曲なのだけど、そういうこと関係なしにどんなところで鳴っても場の温度をグイッと引き上げる力を持っている気がする。そして雨男岸田は「雨、やましたろか」みたいなことを言っていたのだが、確かに演奏が終わった頃にはほとんど止んでいた。

くるり SET LIST
1.ワンダーフォーゲル
2.飴色の部屋
3.(※)かごの中のジョニー(新曲)
4.さよならリグレット
5.ロックンロール
6.(※)カモメはカモメ(新曲)
7.ブレーメン
8.ばらの花
9.東京
(※)新曲タイトルは、小生が勝手に付けた適当なものです

 レミオロメンは見ずに、グッズ引き換えに移動。ちょっと並んだけどすんなりと引き換え完了。オフィシャルグッズは会場で買おうとするとかなり並ぶのでやはり事前に先行販売で買っておくのがよいと思う。他の出演者グッズも物色し、嫁は電気グルーヴタオルを、僕はバービーTシャツがあったのでゲット。毎年ご一緒させていただくnyoさんご夫妻と再会し、しばし歓談。次は矢野顕子に移動。

 ちょっと遅れてレッドスターに到着。ピアノ弾き語りスタイルでのライヴだったのだけど、これがものすごかった。ちょうどステージに着いたときにはくるりとのコラボシングルに収録されていた「おいてくよ」を演奏していた。そこから「さようなら」へ。先に見たくるりとは音の密度はもちろん全く違うのだけど、音楽の持つ総体量は全く変わらないような。彼女の声とピアノの音だけで、これだけの世界が作れてしまうという、その事実に感動すら覚えてしまった。そこから、秋に発表されると言う新作から3曲続けて演奏された。夕暮れの時間帯の中かなりまったりと見ていたのだけど、このあたりは背筋に戦慄すら覚えた。ほとんどアドリブで紡がれていくようなメロディーとピアノの中、一点を射抜くような厳しいフレーズが空間にピシッと跡を残していくような。続く「雷が鳴る前に」も素晴らしい演奏だった。緊張と弛緩。周りには涙ぐんでいる人もいたけれども、僕はただただこの音楽の前に立ちつくしているのみだった。それでいて、MCはこう言っては失礼かもしれないけれども本当にかわいいのだった。癒されるあの声。新作は日本語版と英語版と出て、両方合わさったBOX版が出るらしいのだけど、「お金のある人はそっちを買ってね」とのこと。「お金のない人は・・・しょうがないわよ、ねえ?ないんだもの」だって。続いては奥田民生のカバーと言うから何をやるのかと思ったら、「股旅(ジョンと)」だった。しかも、矢野顕子のカバーがすべからくそうであるように、途中まで何の曲だかわからないほどにフリーランスなアレンジだった。そして、最初の第一声から歓声が沸いた「ごはんができたよ」。これはさすがに泣きそうだった。雨が上がったとは言っても陽が落ちると気温がぐんと下がるこの時期の北海道。そんな中、ほんのりと温まるような歌声だった。どうもありがとうございました。

矢野顕子 SET LIST
1.?(間に合わなかった)
2.おいてくよ
3.さようなら
4.(新曲)
5.(新曲)
6.(新曲)
7.雷が鳴る前に
8.股旅(ジョンと)
9.ごはんができたよ
10.ひとつだけ