無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

[RSR]RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO(2)〜復活の蜂。

■2008/08/15@石狩湾新港
 止んだかな、と思った雨は霧雨程度でもまた降ってきたりとこの日は終始はっきりしない天気だった。予報では翌日は降らないとのことだったので多少降っていても気楽ではあったが。さて、今年の懸念事項といえば何をさておいてもトイレである。今年は果たして何基のトイレが生き残れるのか?具体的にどういう対策を取ったのかは知らないけれどトイレの数自体はそんなに変わっていない気がした。ただ、トイレエリアを分散させないで、一ヶ所に相当数のトイレを設置する、という方法だったように見える。あと、トイレエリアに「トイレマナー」みたいな立看板があって利用者に注意を促していたようだ。まあ、結果的に昨年のようにトイレがひとつも使えないという事態はまぬがれたので成功だったのかもしれない。昨年痛い目にあった人は自分でちょっと乱暴に扱わないように注意したりしたかもしれませんね。

 矢野顕子を見たあとは腹ごしらえをし、テントに戻って着替えたり一服し、サンステージへ。ムーンサーカスのすぐ前にテントを張ったので、移動にかなり時間がかかる。道の混雑具合にもよるが、ムーン→サンであれば20分は見ておきたい。ムーン→アースなら25分。あと、途中で鼠先輩見た。ちょっとウケてた。

 東京事変。さすがにスタンディングゾーンもかなりの混み具合。メンバーは、全員浴衣で登場。最後に出てきた椎名林檎も当然、浴衣。上に茶羽織を羽織って、なんとも色っぽい。「丸の内サディスティック」からスタートし、「ランプ」「ミラーボール」と続く。MCのご丁寧な口調もいつものごとく。「どうぞお付き合いくださいますようお願い申し上げます」なんてこの格好で言われた日にはまるで旅館の女将のようですな。ステージ上の動きや立ち居振る舞いも非常に上品できちんと練習された舞踊のよう。見とれてしまう。メガホンマイクを使っての「歌舞伎」「OSCA」の後はしっとりと「ピノキオ」を歌い上げる。椎名林檎はあまりライブ中はしゃべらない人というイメージだったのだけど、この日は50分のステージの間結構話していた。面白かったのは客とのこんなやり取り。
林檎「皆さんやはり道産子の方なんですか?」
林檎「この中で我こそは最も遠いところから参加している、という方いらっしゃいます?」
客「北京ー!」
林檎「北京!今大変なことが行われているというのに」
 明日も自分はソロで出ますが、今は東京事変にお付き合いくださいということで、「キラーチューン」「黒猫道」ラストは「閃光少女」。メンバーのプレイヤビリティも安定しているし、各楽器の音がはっきり主張しているのに、乱雑になり過ぎないのは各メンバーが分をわきまえているからなんだろうと思う。その分、何が起こるかわからないハプニング的要素は少ないのだけど、ショウ(見世物)としてこれだけ完成されていれば言うことはないでしょう。とにかく、椎名林檎の妖艶さにヤラれました。

東京事変 SET LIST
1.丸の内サディスティック
2.ランプ
3.ミラーボール
4.歌舞伎
5.OSCA
6.ピノキオ
7.キラーチューン
8.黒猫道
9.閃光少女


 嫁はそのままサンステージに残って電気グルーヴ。僕も後ろ髪引かれながら、次はこっちに行くしかないでしょう。復活のバービーボーイズ。バービーに対する僕の思いは別カテゴリで書いたのでここでは繰り返さないけど、中学高校時代最も好きだったバンドのひとつだし、今でも「日本のロック」の原風景として自分の中にあるバンドだ。楽しみでないわけがない。アーステントの外からジャンボ串を食べながらジュンスカを聞く。かなり盛り上がっている。「歩いていこう」とか「START」とか懐かしい。このままバービーまで聞いていく80's現役世代も多いのだろう。今年はアーステントを若干大きくして入場規制がかからないよう配慮したりもしたらしい。あと、出入り口の構造も少し変わったのだけど、そのせいか終演後の客の入れ替えがもたつくようになった。二つゲートがあるなら入り口専用出口専用で分ければいいのに。いろいろ変わっている部分もあるんだけど、必ずしも改善ではなく改悪になっている場合も多いんだよなライジングサンは。
 入場すると、すでにかなりの人。さらにどんどん増えてくる。僕のようにリアルタイムでファンだった人だけでなく、若い世代も結構いる。去年フライングキッズを見たときと同じようなワクワク感が次第に抑えられなくなっていく。電気が消えた瞬間、大歓声。1曲目は「ノーマジーン」。ちょっと意外。しかし、演奏そのものは驚くほどに昔のままだ。コンタのハイトーンボーカルもソプラノサックスも、イマサのギターも何も変わっていない。正直、ちょっと指がもたつくとか衰えがあるんじゃないかという気もしていたのだけど、まったくの杞憂。すみませんでした。杏子さんのヒラヒラクルクルダンスも往年のキレ。もうメンバー全員40代後半くらいのはずだけど、大人の色気こそあれ加齢臭はまったく感じない。コンタのMC「オレたちのこと待ってたってやつもいるだろうけど、お前らなんか嫌いだ・知らねえ・聞きたくもねえ。そういうヤツらは・・・目を閉じておいでよ!」うわー。このベタベタに決めたつもりが微妙にはずしてるMCも昔のままだ。しかしそれがたまらなくカッコいい。途中にはこんな下ネタも。「この中にいる若い女子!は、きちんと親に電話すること。でも、間違っても『今日はびしょびしょになっちゃったけど、大丈夫、隣で彼がテント立ててるから』なんて言うんじゃねーぞ!」わはは。ビシッと決めていながらこういうこと言うところが好きだ。素のMCがデフォルトみたいに思ってる若いバンドはこういう芝居っ気も学んでほしい。こういう復活の晴舞台だし、シングル中心に代表曲目白押しなセットになるのかと思ったら、1stから「ふしだらVSよこしま」とか選ぶあたり、かなり意外だった。コンタと杏子さんのボーカルのバランスを考えての選曲だったようにも見える(曲によっては片方の出番がほとんどないこともある)。「離れろよ」「負けるもんか」そして「C'mon Let's Go」の流れは必殺と言ってもいいクライマックス。「『3rd Break』神」の僕にはうれしい「ショート寸前」から、ラストはこれも意外「マイティウーマン」で終了。まさか、この2008年にバービーを生で見れるとは思っていなかったので良かった。しかも演奏も昔のままだったとなれば、なおさら。唯一の不満は「なんだったんだ?7days」をやってくれなかったこと。てっきりラストはあれで締めると思ったのに。そうやって聞き手をじらすのも昔のままだ、と言えばそうなのだけど。もう一本夏のイベントに出て、その後はどうなるのだろう。もう最後なのかな。新曲までとは言わないけど、このくらい演奏できるならたまにはライヴをやってくれるとうれしい。

BARBEE BOYS SET LIST
1.ノーマジーン
2.目を閉じておいでよ
3.女ぎつね On The Run
4.ふしだらVSよこしま
5.離れろよ
6.負けるもんか
7.C'mon Let's Go
8.ショート寸前
9.マイティウーマン

 サンステージではKEN YOKOYAMAが演奏していた。「雨にぬれても」をやっていた。レッドスター横のレストランエリアで嫁と落ち合う。電気グルーヴも最高だったらしい。4月の恵比寿リキッドルームでのライヴの再現と言う感じで、「ママケーキ」でまりんが登場したとのこと。「電グルが自分の青春」と言い切る嫁は叫びまくって大変だったようだ。でも周りで見ていた新し目のファンは「誰?」みたいな雰囲気だったのでふざけるな!と嫁はいたくご立腹だった。ラストの「カフェ・ド・鬼」はバックトラックが「富士山」だったらしく、それだけで嫁には失禁モノだったようだ。ちなみに嫁から聞いた電気のセットリストはこんな感じ。完璧だね。

電気グルーヴ SET LIST
1.ズーディザイア
2.モノノケダンス
3.N.O.
4.あすなろサンシャイン
5.かっこいいジャンパー
6.Flashback Disco
7.虹
8.ママケーキ(with まりん)
9.カフェ・ド・鬼+富士山(with まりん)

 そんなことを話しながらレッドスター山下洋輔ニュー・カルテットをバックに飯を食う。超絶フリーキーなフリージャズを演奏していた。ピアノって打楽器なんだよなあ、ということを改めて感じる。レッドスターカフェで安田大サーカスのクロちゃんみたいなおっさんが弾き語りをしていた。ポリスの「ロクサーヌ」とかクイーンの「ファット・ボトムド・ガール」とか。無駄に発音良い。最後は客に手拍子もとめて「ウィー・ウィル・ロック・ユー」。こういうの楽しくていい。調べるとフレディ・エトウという人で、日本が誇るクイーンのトリビュートバンド、KWEENのボーカルだそうです。おつかれさまでした。

 テントに戻って一休み。ムーンサーカスの音がテントでも丸聞こえなので嫁は休みながら聞いているとのこと。僕はステージまで行ってテイ・トウワのDJで踊ることにした。ムーンサーカスも以前に比べるとずいぶんステージが大きくなった。レーザーなど照明も派手で、まさに音と光の洪水という感じのトランス空間。ウチの嫁も言ってしまえばそのひとりだが、このムーンサーカスのファンでここに張り付きで踊る、という人も実は少なくないらしい。テイ・トウワはまさにゴッタ煮DJという趣で、オリビア・ニュートン・ジョン「フィジカル」、アンダーワールド「トゥー・マンス・オフ」、ビートルズ「ツイスト&シャウト」、坂本龍一千のナイフ」、KISS「アイ・ワズ・メイド・フォー・ラヴィン・ユー」などなど、これでもかと言うくらいの大ネタを駆使して盛り上げていた。さすがに疲れたし明日もあるので今日はこのくらいにしといたるという感じで就寝。明日は雨降らないはず、と思いきや、夜中テントにパラパラ雨が落ちる音で何度か目が覚めた気が・・・。