無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ラスト・アクション・ヒーロー。

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull
■監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:ハリソン・フォードカレン・アレンシャイア・ラブーフケイト・ブランシェット

インディ・ジョーンズ/ クリスタル・スカルの王国 スペシャルコレクターズ・エディション 【2枚組】 [DVD]

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 実に、19年振りとなるシリーズ第4作目。前作『最後の聖戦』の舞台となったのが1938年。今回の時代は1957年となっている。映画の中でも現実と同じ時間が流れたということになる。当然、インディ・ジョーンズは年をとり、父親のヘンリーも良き理解者であった博物館館長のマーカス・ブロディもすでにこの世にはいないということになっている(ブロディについては演じていたデンホルム・エリオットが故人となったということもあるのだろうが)。1、3作目ではインディと争うのはナチスだったが、本作の舞台は1957年、つまり米ソ冷戦の真っ只中ということで、当然ソ連の軍隊である。インディ自身も謀略に巻き込まれいわゆる「赤狩り」の対象となってしまい大学の職を追われる身となる。そんな中かつての恋人マリオンが捕まったという話をマット(シャイア・ラブーフ)という若者から聞き、彼女を助けるためクリスタル・スカルの謎を追ってペルーへと旅立つ、というのが大まかなストーリー。
 1947年に起きたロズウェル事件を元にしたストーリー展開に、クライマックスでは衝撃(?)の謎が解き明かされる。ある意味でシリーズ中最もトンデモなクライマックス。遺跡の謎を追って様々な超常現象に出会ってきたインディだが、さすがにこれは・・・。でも、ロズウェル事件を扱った以上しょうがないのか。ソ連軍の大佐にしてKGBのエージェントというイリーナ・スパルコ役を演じたケイト・ブランシェットは非常に良かった。ロシアなまりの英語の発音も完璧(ネイティブじゃないからわからないけど)で、凛とした軍人役がハマリすぎ。ピンチになってもあせらず、表情を変えずにインディたちにマシンガンをぶっ放す様子など、M系の方々にはたまらないでしょうね。
 『レイダース失われたアーク』以来27年ぶりにシリーズ登場となったマリオン役のカレン・アレンは確かにおばさんになったがハリソン・フォードとの口げんかなどハネっかえりぶりは変わらず。そしてケンカしつつも結局男女なのよねというツンデレぶりも変わっていない。過去3作のイメージを踏襲するジェットコースターアクションも御年65歳になったハリソン・フォードの体を張ったアクションもまだまだ健在。スピルバーグは、あくまでもインディ・ジョーンズというキャラクターをヒーローとして描きたいのだと思う。本当なら、息子のマットがもっと大活躍して「親父はもう年なんだから引っ込んでろ。これからはオレの時代だ」なんて感じでインディがダメ親父になってしまう、という展開もアリだったと思うのだけど、インディは最後までパーティーを牽引しマリオンやマットを守り続けるのだ。これもスピルバーグとルーカスが作り上げたインディ・ジョーンズというキャラクターへの最後の愛情なのだろうか。ラストはマリオンとの結婚式シーン。もう冒険は終わり、幸せな家庭人になるのだという暗示とともに、それでもインディの冒険者としての象徴である帽子をマットが拾い上げようとするとスッとインディが先に拾って見せつけるように被るのだ。息子に向かって「まだ早いよ」とでも言うように。
 まだシリーズが続くのかどうかはわからないが、時代が現代に近づいてしまった以上古代の遺跡を追って冒険するというストーリーがますます現実味の無いものになってしまうのは確実。ここできれいに終わるのが幸せだと思う。前3作に比べるとやはりインパクトは落ちてしまうけど、見て損したと思う作品ではなかった。あまり難しいこと考えずに誰でも楽しめる冒険活劇というのは楽しいもので、そういう映画本来の楽しさを凝縮したようなこのシリーズはやっぱり好きです。山をモチーフにしたパラマウント映画のロゴから、同じような山の形のシーンに移って映画が始まるところなど、シリーズ通してのお約束も健在なのがうれしい。過去3作へのオマージュ的な要素もたくさんあるようなので、後々DVD化されたら見直してみたいと思います。