無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

一発屋と呼ばないで。

Here We Stand

Here We Stand

 フラテリスの2作目。デビュー作だった前作は"Flathead"という大ヒット曲のインパクトもあってかなり好意的に迎えられたわけだけれど、彼らがiPodのCM曲で注目された一発屋で終わるのか否か。バンドとしての真価が問われるのはこの2作目だろう。セルフ・プロデュースで制作された本作はデビュー作にあったラフな勢いも残しつつ、メロディーもアレンジもかなり幅のあるものになっている。ピアノが大フィーチャーされた2曲目など、非常にいい(ちょっと、PEALOUTを思い出した)。全体としては若干地味な印象はあるものの、バンドの力量をしっかりとらえた力作と言えると思う。
 前作でも思ったことだけど、全体のサウンドの感触としてこのバンドにはイギリス臭さが全くと言っていいほど無い。むしろそのあっけらかんとした大らかさや大陸的な広がりのあるアレンジはアメリカっぽい。カントリーっぽいギターのリフやノスタルジックなコーラスなど、南部のバンドのようだ。前情報が無く聞いたらアメリカのバンドだと思ってしまうだろう。そんなものどちらでもいいじゃないか、という人もいるだろうけど、実はこの個性こそがフラテリスの大きな武器なのではないかと思っている。時代感とかほとんど関係なしにグッドソングをグッドアレンジで聞かせてくれるという安心感が。
 歌詞も、相変わらず自己憐憫や内省といったテーマとは無縁。正確に言うと、そういうテーマを扱うにしても第3者的に、様々なキャラクターの物語として書いている。客観的でドライな視点がレイモンド・カーヴァーの短編小説のような感じといったら言い過ぎか。そんなところにもアメリカっぽさを感じると、無理やりまとめてみたりする。いいバンドだと思います。