無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

明日はどっちだ。

Beautiful Future

Beautiful Future

 前作『ライオット・シティ・ブルース』から約2年ぶりのプライマル・スクリーム新作。前作はカントリー、ブルーズなどのルーツ・ロックを彼らなりに咀嚼したアルバムだったが、今作はもっとエレクトロ寄りのサウンドになっている。ポール・エプワースやビョーン・イットリング(ピーター、ビョーン・アンド・ジョン)など新進のプロデューサーと組んだこともあるのだろうが、音自体がかなり若返ったような印象を受ける。タイトル曲など、ポップな曲調やタイトル自体の意味も含めてプライマル・スクリームがこれをやってると思うと悪い冗談にしか思えない(褒め言葉です)。
 エレクトロ寄りのサウンドとは言っても『ヴァニシング・ポイント』『エクターミネーター』『イーヴル・ヒート』の3部作にあったような凶悪な暴力性のようなものは薄く、非常に聞きやすい。あの当時のサウンドを期待して本作を聞いても肩透かしのような感覚を覚えるかもしれない。打ち込みよりもバンドアンサンブルを基本にアレンジが組み立てられているので、前作の延長線上にありつつもダンス性もあり、とここ10年のプライマル・スクリームが行ってきたサウンドの革新を刈り取るような印象も受ける。
 プライマル・スクリームというのは僕の中では「アルバムごとに別のバンドになるバンド」というくらい節操無く自らのサウンドを刷新していくバンドというイメージがある。いいアルバムだとは思うのだけど、そういう意味での驚きはやや物足りなかったとも思う。何と言うか、少し安全なラインでまとまっているのかなという感じを受けてしまった。その点がちょっと残念。