無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

電気が電気である理由。

電気グルーヴ  ツアー2008 “叫び始まり 爆発終わり”〜山親爺スペシャル〜
■2008/11/13@札幌ペニーレーン24
 フェスやイベントでの単発ライヴを除けば、電気グルーヴのツアーとしてのライヴは実に2000年、『VOXXX』発表後の「ツアーツアー」以来8年ぶりとなる。今回のツアーは元々札幌は予定されておらず、WESSのプッシュもあって急遽実現したものなのだそうだ。なのでツアーの中でもこの日は「山親爺スペシャル」と題されている。「山親爺」というのは札幌の老舗菓子メーカーである千秋庵が発売している洋風煎餅の名前で、北海道ではおそらく知らないものはいないほど有名なお菓子である。北海道民ならまず間違いなくこのお菓子のCM曲を口ずさめると思う。個人的にはそれが出来ない者に北海道民を名乗ってほしくない。というほどポピュラーなもので、この日も卓球と瀧はステージ上から山親爺をフロアにバンバン投げ込んでいた。しかし卓球はMCの中で「『黄色い恋人』にすればよかった」と言っていた。ペニーレーンは開演30分前にはほぼ満員状態という熱気。おそらくはRSRで知ったというくらいの若いファンもいるが、僕と同年代以上のベテランファンも多い。実はこの日11月13日というのは、16年前(1992年)、『KARATEKA』を出した後のツアーで同じくペニーレーンでライヴを行った日だという。電気グルーヴがこのペニーレーンのステージに立つのはその日以来16年ぶりで、何か因縁じみたものがあると2人もMCで話していた。ライヴはKAGAMIをサポートDJとして迎え、バックのスクリーンにはDEVICE GIRLSによるVJが流されるという、おなじみの布陣。ステージ上の3人は「yellow」のジャケットのピカチュウもどきをワンポイントにあしらった紺色のおそろいの作業服を着用。
 今年発表された2枚のアルバムが中心になるのだろう、と思ったが、そしてそれは間違いではなかったのだが、これはサービスしすぎなんじゃないのか、これだけやってしまったらまた何年か電気としては姿消すんじゃないのか、と不安になってしまうほどの凄まじく濃密な時間だった。序盤は『J-POP』、『yellow』からの曲で構成するが、MCを挟んでいきなり「シャングリラ」をポンと出す気前のよさ。そして「MUD EBIS」に「Bingo」という、『Flash Papa』や『UFO』時代の曲も惜しげもなく繰り出すオールタイムベストとでも言いたくなるような展開。電気のライヴは当然瀧がいて卓球のDJとは全く別物なので、卓球が前に出てマイクを握るということが大きなポイントになる。しかし歌モノ中心のセットの中でも新作からの「Acid House〜」や「Fake It!」なんかはそのままフロアに持っていっても全くおかしくないほどのカッコよさ。90年代を思わせるレイヴサウンドがほんのりと懐かしかったりもする。そして一度ステージを離れた瀧が「ガリガリ君」で戻ってくると、白いシルクのパジャマを着て鳥居みゆきのコスプレをしている。「この衣装着て出るのはこの日が初めて」「なぜなら瀧に合うサイズのシルクのパジャマが売ってなくて、札幌でようやく見つけたから」「瀧は楽屋で鳥居みゆきの動きをYouTubeで確認していた」「今日が最後だと思います」らしい。続いてはこれまた懐かしい「マイアミ天国」。どういう基準で今回の曲をセレクトしたのかはわからないが、これだけ初期の曲をやったというのは正直驚きだ。「B.B.E.」はもとより、卓球一人で前に出て(瀧はなんちゃってキーボード操作)「N.O.」を歌ったりもしたのだ。ちょっとなんと言うか、感動を覚えたりもした。「キラーポマト」で瀧は曲そのままに緑のジャージ姿で登場。「どんだけ〜」ではビニール製の鬼の金棒で前列の客の頭を叩きまくったり、自転車のハンドルだけ持って来てベルを鳴らすも全く聞こえなくて客に渡して放置したり、小物も冴えていた。「VOLCANIC DRUMBEATS」では火山をイメージしてかスモークがガンガン吹き上がりステージが見えなくなるほど真っ白になった。
 2時間を過ぎても終わる気配は全くなし。客も大盛り上がりだ。「もうちょっとやるけど、大丈夫?帰れる?」「そろそろアレでしょ、門限じゃない?施設の(笑)」客、完全にキ○ガイ扱い(笑)。「モテたくて・・・」をウルトライントロクイズで正解できるウチの奥さんはそう思われて仕方がないかもしれないが(「ギ・おならすい込み隊がポップジャムに出てたの見てたよ!」と大声で話すくらいだ)。踊りまくり叫びまくり、しかも人口密度も高く汗びっしょりの中「誰だ!」で本編終了(ようやく)。卓球一人で出てきてアンコール。瀧、「トイレ行ってるから一人でやってて」とのこと。その前にもトイレ行ってた。ライヴ中にビール(北海道限定サッポロクラシック)4〜5本は飲んでいたらしい。卓球の見たくだらない夢の話(ウンコネタなので割愛)やその昔「冗談画報」に出たときに卓球がコントレオナルドレオナルド熊に似てると言われた話なども含め、とにかくMCもユルユルのグダグダなんだけど、面白くて仕方がない。ずっと笑っていた。JAPANのメロン牧場って毎月こんなトークしてるのか、と思うとよく考えたらすごいよね。このくだらないトークだけで十分商品として成り立ってしまう、成り立たせてしまうのが電気グルーヴというユニットの唯一無比なところでもあるだろう。悪ふざけの最たるものは観客いじりにも及び、ステージに上げたお兄ちゃんと瀧が口移しでビール往復移動というハプニングも。素晴らしく最低すぎて言葉も無い。
 アンコールは卓球のピアニカをフィーチャーした「地蔵」から、これまた超絶懐かしい「ビーチだよ!電気GROOVE」に「Cafe de 鬼 (顔と科学)」と続き、ラストは「カメライフ」。実に終了したのは22:30を過ぎ、3時間に及ぶ長丁場だった。毎年RSRLOOPA NIGHTで緑のジャージで踊りまくるウチの奥さんですら「3時間ぶっ続けで踊ったことはない」と言うくらいのライヴ。正直、ここまで歌モノ中心で盛り上がるとは思わなかったし、古い曲を多くやるとも思わなかった。そしてとにかく印象的だったのは何するにしてもステージ上の卓球と瀧がとにかく楽しそうだったということ。時折観客そっちのけで2人で話して爆笑してたりするし、「オイオイ、今ライヴ中だよ?」とツッコみたくなるほど素で楽しんでいたように見えた。「あの」電気グルーヴがいよいよ新作リリース!的な周囲の期待を裏切るようにあっという間に今年2作目の新作を出したり、2人が電気グルーヴであることが何も特別なことではないと言うことがイヤでも伝わってくるのだった。電気をやるとかそういう概念ではなく、この2人がいたらもうそれは電気になってしまう。そういうことなのだろう。とにかく楽しく、笑い、感動した。電気のファンでよかったと思った。MCの最高なくだらなさも含めてフェス以外では今年のベストライヴでいいと思った。ここまでやるんなら「虹」や「あすなろサンシャイン」も聞きたかった、というのは贅沢というものだろうか。東京公演でまりんが出てきたりしたら瞬殺だろうなあ。なんか、その可能性もあるんじゃないかと思わせるおなか一杯ぶりだった。

■SET LIST
1.ズーディザイア
2.モノノケダンス
3.ア・キ・メ・フ・ラ・イ
4.半分人間だもの
5.どんだけ the ジャイアン
6.さんぷんまるのうた
7.少年ヤング
8.Shangri-La
9.MUD EBIS
10.Bingo
11.Acid House All Night Long
12.The Words
13.Fake It!
14.ガリガリ君
15.マイアミ天国
16.ニセモノフーリガン
17.Area Arena
18.湘南アシッド
19.FLASHBACK DISCO
20.Nothing's Gonna Change
21.キラーポマト
22.スコーピオン
23.B.B.E
24.VOLCANIC DRUMBEATS
25.かっこいいジャンパー
26.レアクティオーン
27.スネークフィンガー
28.N.O.
29.モテたくて・・・
30.誰だ!
<アンコール>
31.地蔵
32.ビーチだよ!電気GROOVE
33.Cafe de 鬼 (顔と科学)
34.カメライフ