無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

第61回全日本合唱コンクール全国大会(1)〜大学部門

■2008/11/22@岡山シンフォニーホール
 会場の岡山シンフォニーホール岡山駅から桃太郎通り沿いを20分くらい歩いたところにあるホール。市電沿いにあり、隣にすぐ商店街などもありこんな町中にこれだけ立派なホールがあるということにちょっと驚き。ホールも素晴らしく、まさに風呂場という噂どおり豊かないい音が会場中に響いていました。出演者の方に聞くとステージ上でもよく音が聞こえて非常に歌いやすいホールだったようです。ああ、ここで歌ってみたかった・・・!
 さて、私が聞いた団体の中からいくつかピックアップして感想を書こうと思いますが、基本的に私個人が強い印象を受けた団体の感想のみに限定して書きます。そしてその感想は私個人の印象でしかないので、審査結果はもちろん他の方の感想と違う部分があって当然だと思います。「何書いてんだコイツ?」と思うことがあったとしたらそれはひとえに私の文章力の無さと音楽知識・感性の乏しさゆえのことです。強い印象=気に入ったということなので基本的にネガティブなことは書かないつもりですが、万が一感想を見て気分を害された方がいましたら先にお詫びしておきます。あと、普段ロックのライブの感想とかしか書いてない人間ですが、そういう人間が合唱の感想書くとこんな風になると思って気楽に読んでいただければと思います。
 感想一発目はまず大学部門。今年からAグループ(32人以下)/Bグループ(33人以上)の区分が無くなって一緒くたになってのコンクール。ぞの是非はいろいろあると思いますが、それは置いといて団体の感想です。

■No.3 金沢大学合唱団(石川県・混声・58名)
 会場到着が遅れたのでここから聞きました。自分にとってこの会場で聞く一発目の音楽だったので最初は「ああ、こういう感じか」と思っていたのですが、最後の方になると「実はかなりいいだろこれ?」と思ってました。そのあと数団体聞いてみてやっぱりここは上手かったと確信しました。特に自由曲の「愛」はユニゾンが多いので、各々のパート内はもちろんのこと男声女声でも母音の形、声の方向、音圧などがきちんと統一されていないときれいにならないと思います。そういうところをクリアして音楽のよさ、メロディーの美しさに集中させてくれました。

■No.5 北海道大学混声合唱団(北海道・混声・88名)
 自分がここのOBなのであまり客観的な感想は書けないかも知れませんが・・・。実は昨年の全国での演奏は聞けてません。演奏会で同じ曲を聞きましたが、その時は正直「これで全国2位だったのかあ」と思いました。しかし、この日の演奏はこれなら前年2位シードに恥ずかしくない演奏だろうと思いました。学生指揮のためか、ところどころ「?」と思う部分もあったにせよ、よくこなれた演奏だったと思います。自由曲は、正直言っていい曲なのかどうなのかよくわかりませんでしたが、真摯に練習してきただろうことは伝わりました。しかし、OBでありながらなぜここまで上手くなったのかよくわからないんですよね。男声は確かにここ数年いい人材が増えてきたとは思いますけど。人数が増えたのも一員だと思いますが、じゃあなんで増えたのかもよくわからない(笑)。なんにしても個々人の歌のバラツキを吸収できるだけの人数がいるというのはやはり強みです。そういう響きの中で歌っていくことでまた個人のレベルも上がっていくっていう部分もありますよね。2年連続の金賞、おめでとう!

■No.7 東京工業大学混声合唱団コール・クライネス(東京都・混声・120名)
 とりあえず、毎年全国大会のステージ山台はここが乗れるように作っている、のだと思います。120名はやっぱりすごいですわ。これでも昔よりは減ったわけですからね。人数が多くていいのはfで単純に音量が出ることと、その分pに抑えた時の差が出るので音楽のダイナミクスが格段に違うことですね。その分pの表現をどこまで緻密に出来るかが勝負だと思うのですが、やっぱり地力があるところはその辺ソツが無いです。ただ逆に今回は音量で圧倒されるような場面はなかったかなという気がします。自由曲はペンデレツキの「Agnus Dei」。一般Bで同じ曲のあまりにもすごい演奏を聞いてしまったので印象が薄れてしまいましたが、好演でした。

■No.9 金城学院大学グリークラブ(愛知県・女声・22名)
 120人の後にこの人数ですからね。さぞかしやりにくかったことと思います。しかも話に聞くと初出場とのことで、その心中察すると・・・ですが、個人的にはかなり好みでした。スケールの小ささは否めませんが、素直で真っ直ぐな発声で、個々人のレベルの高さが良くわかる演奏だったと思います。ていうか女子大生が少人数でけなげにがんばっていると言うだけで応援したくなるものでしょう。そうでしょう?(下世話ですまんです)

■No.17 立正大学グリークラブ(東京都・混声・35名)
 コンクールの自由曲にはある程度流行り廃りみたいなものがあるものですが、ここ数年の大学職場一般は千原英喜祭りと言ってもいい様相ですね。確かに難易度の割りに聞き栄えするし、コンクール向きなのかもしれません。個人的にも一度は歌ってみたいと思います(人数がいれば・・・)。で、立正大学は千原氏の「牡丹圏」と言う曲を演奏したのですが、カッコよかったですねー。鳴り物が入る曲で歌い手が担当していたのですが、太鼓を叩く男の子がとにかくカッコよかった。何がカッコいいって、左手で太鼓抱えて右手にバチを持つのですが、その右手を肘まで腕まくりするわけです。その江戸っ子でいなせな感じ(?)がGOODでした。千原氏の曲は謡曲的な歌い回しがあったり、通常の西洋的な合唱曲とは違う演出もありますが、そういうのを外連味いっぱいにさらけ出してやってくれると聞いてる側も拍手喝采ですね。

■No.18 福岡教育大学混声合唱団(福岡県・混声・58名)
 自由曲は三善晃の「動物詩集」。昨年北大混声が金賞シード取った際にも演奏していた曲です。この曲、私も歌ったことがあるんですが一番キーになるのは2曲目の「ひとこぶらくだのブルース」だと思ってます。これを、どこまで表現豊かに歌えるかだと思います。でも「ブルース」なので、クソ真面目にきれいな合唱をしてもダメなのです。それだとブルースにならない。福教大はソプラノのメロディーに大人の色気と憂いと気だるさがありました。フレーズの入りや終わりで微妙にしゃくったりこぶし回すところもいい。ドレス着たシンガーが場末のバーで歌っているような雰囲気がありましたね。逆に男声はハミングが主なので難しいんですが、もう少しその雰囲気があればもっとよかった。ブルースやジャズやロックなど、作曲家が明らかにクラシックとは違う他ジャンルの音楽を意図して書いた曲を演奏する時はその音楽のフォーマットに見合った演奏をすることが重要だと思います。時には楽譜にあるものを再現するだけではなく、意図的にクラシカルな発声を崩す作業が必要にもなる。それは技術的なこと以上にセンスの問題のように思います。この福教大の演奏はそういうセンスのあるものだったと思います。