無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

第61回全日本合唱コンクール全国大会(2)〜一般部門A

■2008/11/22@岡山シンフォニーホール
 続きましては一般部門Aの感想です。
■No.1 声楽アンサンブルLa Musica(石川県・混声・22名)
 指揮者のエヴァさんという方のお名前に見覚えがあったのですが、2002年の大津全国大会の時に金沢混声合唱団で指揮をされていた方でした。あの時は課題曲と自由曲で指揮者が交代し、彼女が自由曲でバールドシュを演奏したのでした。さすがハンガリー出身という、素晴らしく躍動感のある音楽だったのを記憶しています。ものすごく印象的でした。今回も自由曲ではハンガリー出身のオルバーンを小気味いいリズムで演奏。それでいて発声が乱れず、音だけ聞いていたら日本の合唱団ではないような錯覚さえ覚えました(外国のCDでも聞いているような感じ)。エヴァさん、カッコよかったです。課題曲もハネハネのリズムで宗教曲というよりマドリガルのような勢いだったのは驚きましたが。こういう解釈もアリ、なのかな。

■No.5 アンサンブルVine京都府・混声32名)
 まず課題曲、僭越ながら、自分の団でこの曲を歌っているときとほぼ同じ曲想だったので、気持ちよく聞けました(もちろん、レベルは段違いですが)。ここで盛り上がって、ここを目指して、ここに終着する、というフレーズの流れがどのパートも淀みなく表現されていました。見事です。自由曲のウィテカー「With a lily in your hand」も歌ったことがありますが、ロックのような激しいリズム処理と中間部の流れるようなフレーズが見事に対比され、小宇宙のような広がりを表現していました。この曲の見本みたいな演奏。マンチュヤルビの2曲も引き込まれました。パフォーマンスも派手すぎず、しかし思い切って演じてました。一言で言えば「楽しい」ステージ。自分の団でこういう演奏をコンクールでやりたいなあ、と思うものを全部やられてしまったという感じです。

■No.8 一関市民合唱団(岩手県・混声32名)
 2004年の松山大会の時に打ち上げで合流させていただいたのですが、その時以来の全国ということになります。そして今回も、ウチの指揮者が岩手出身と言う縁もあり打ち上げにお邪魔させていただきました。4年前に会ったきりなのに覚えていてくださった方もいて嬉しかったです。で、驚いたのは団員に現役の高校生もいるということ。上は60代位の大ベテランまでということなので、本当に年齢層が広い。市民合唱団という名前に偽りなし、という感じです。指揮者の黒川さんの息子さんも歌っていたりして、文字通りアットホームな雰囲気。そして演奏も、やっぱりそんなムードを体現しているようで、どこかホッとする温かい音なんですよね。自由曲はVineと同じくウィテカーの「With a lily in your hand」をやっていたのですが、個人的にはもう1曲の「sleep」に引き込まれました(寝ちゃいました、という意味ではないです)。前述のアットホームなムードから一転、緊張感のあるサウンドでラストの一音まで聞き逃すまい、と集中させられました。素晴らしい演奏でした。東北大会で一般A常連の会津混声合唱団さんが負けたということで驚いたのですが、一関市民さんもやっぱり全国レベルの実力があると言うことなんですよね。打ち上げでは今年の課題曲G1と「Lily」を一緒に歌わせていただきました(ウチでも歌ってたので)。楽しかったです。ありがとうございました!

■No.10 Combinir di Corista(東京都・混声29名)
 初めて聞いた合唱団なのですが、まだ結成して3年の新しい合唱団だそうです。しかし、ここは上手かったです。音にクセがなく、素直に耳に届いてくる感じ。なまじ何度も演奏を聞いて知っているところだと聞く側も変に先入観を持ってしまうこともあるのですが、そういうことがなかったので、ストレートに音楽を体感することが出来ました。フレーズの終わりの処理が上手いので聴後感(?そんな言葉無いよね。読後感の耳版みたいな意味で)が気持ちよいのです。これから何度も全国に来るようなことになれば(少なくとも来年は決定ですし)この合唱団の個性がもっと見えてくると思います。楽しみです。

■No.11 CANTUS ANIMAE(東京都・混声32名)
 上手いのは当然なんですが、相変わらず熱い演奏です。特に課題曲。熱いというより激しいというべきか。雨森先生の音楽だなー、と思いました。CAは酸いも甘いも噛み分けた大人の音楽、という印象が個人的にはあるのですが、そういう人たち(いや、実際は知りませんが)がこういう熱い音楽をやるとここまで濃いものになるんだな、と思わせてくれます。自由曲はフランスの作曲家ジョリヴェの「祝婚歌」という曲だったのですが、なんでもジョリヴェが結婚20周年に奥さんに贈った曲なのだそうです。しかし、聞いてみたら私にはそんな愛に満ちた曲には聞こえませんでした。なんかすごくおどろおどろしい怖い曲に聞こえました。ジョリヴェって恐妻家なのかなあ、と思ったり思わなかったり。私の耳が変なのかな。

■No.14 浜松ラヴィアンクール(静岡県・女声10名)
 コンクールは規定上8人以上でエントリーできるのですが、ここは10人ですよ。しかし、実際10人で演奏し、ましてやコンクールを勝ち抜いてくるのは並大抵のことじゃないです。同じAグループと言ったって10人と30人じゃ音楽の作り方からホールの響き、聞いた感触まで全然違うのに、一緒くたに比較されるわけですからね。しかし、課題曲からしてその人数を感じさせない見事な音楽の立体感。歌い手個々のレベルがずば抜けて高いのだろうことが一聴しただけでわかります。さすがに演奏の中での余裕は無さそうだなと思いましたが、それでもここまでの音楽をこの人数できっちり作り上げる合唱団の力はすごい。技術だけでなく、団としてのモチベーションも高く維持されているのでしょう。同じく少人数で歌っている人間としては見習いたいものです。