いまだ道の途中。
- アーティスト: ZAZEN BOYS
- 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
- 発売日: 2008/09/17
- メディア: CD
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キーボードや打ち込みを中心とした曲も多く、サウンドは基本的に前作「III」の延長線上にあるものだがその感触はかなり違うと思う。前作では向井秀徳のニューウェーブ趣味がキーボード導入に繋がったのかな、くらいの意識だったのだが、今作では最初からそうでなければならない、という明確な意思の元にこのサウンドが選択されているように思う。特にキーボードや打ち込みを用いた曲は、ギターオリエンテッドなバンドサウンドの曲よりも向井自身の内面や都会で生きる孤独感のようなものが強く表に出ている印象だ。そういった曲はツアー中にホテルの部屋で一人でデモを作っていったというから、そういう曲作りの経緯も影響しているのかもしれない。特に「Sabaku」は、久々に向井のメロディーメイカーとしての魅力が良く出ている。エモーショナルなメロディーと、孤独感がにじみ出る歌詞。冷凍都市の中で生きる寂寞感を湛えながらも、切実に聞き手にコミュニケーションを求めている名曲だと思う。
鉄壁のアンサンブルで独自のグルーヴを紡ぎだす曲と、こうした向井の作家性が表に出た弾き語り調の曲。これらが割りとハッキリ色分けされている印象なのだけど、今後、これらが混じり合っていくのだとしたら、それもまた面白いと思う。ZAZEN BOYSは変り続ける。どこまで行っても完成しない。だから面白いし、こちらも聞き続けるのだ。