無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

いまだ道の途中。

ZAZEN BOYS4

ZAZEN BOYS4

 文字通り、ZAZEN BOYSの4枚目。前作「III」からは実に2年半ぶりとなる。ベーシストが日向秀和から吉田一郎に交代したことが大きな要因だったのだろうけど、ZAZEN BOYSとしての活動開始以来割と早いスパンでアルバムを出していたのでこの空白は非常に長い気がした。新ベーシスト吉田一郎の音は前任の日向ばりに太く、完全にバンドの一要素として鳴っている。彼らは入念にバンドの呼吸を合わせた上でレコーディングを行っていると思うのだけど、メンバーが替わると一からそのグルーヴも作り直し、確認し直さなければならないと思う。「Honnoji」のような曲では松下敦のドラムを中心に現在の4人でのアンサンブルが完全に構築できていることがわかるが、ここに至るまでにどれだけのセッションを重ねてきたのだろうか。2年半という時間もそう考えるとわかる気がする。
 キーボードや打ち込みを中心とした曲も多く、サウンドは基本的に前作「III」の延長線上にあるものだがその感触はかなり違うと思う。前作では向井秀徳ニューウェーブ趣味がキーボード導入に繋がったのかな、くらいの意識だったのだが、今作では最初からそうでなければならない、という明確な意思の元にこのサウンドが選択されているように思う。特にキーボードや打ち込みを用いた曲は、ギターオリエンテッドなバンドサウンドの曲よりも向井自身の内面や都会で生きる孤独感のようなものが強く表に出ている印象だ。そういった曲はツアー中にホテルの部屋で一人でデモを作っていったというから、そういう曲作りの経緯も影響しているのかもしれない。特に「Sabaku」は、久々に向井のメロディーメイカーとしての魅力が良く出ている。エモーショナルなメロディーと、孤独感がにじみ出る歌詞。冷凍都市の中で生きる寂寞感を湛えながらも、切実に聞き手にコミュニケーションを求めている名曲だと思う。
 鉄壁のアンサンブルで独自のグルーヴを紡ぎだす曲と、こうした向井の作家性が表に出た弾き語り調の曲。これらが割りとハッキリ色分けされている印象なのだけど、今後、これらが混じり合っていくのだとしたら、それもまた面白いと思う。ZAZEN BOYSは変り続ける。どこまで行っても完成しない。だから面白いし、こちらも聞き続けるのだ。