無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ハードボイルド。

ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION
■2008/11/29@札幌ペニーレーン24
 フェスでは見てるのだけど、単独のライヴとしては個人的にかなり久しぶりになるZAZEN BOYS。実際、前回ワンマンで見たのは「III」発表前の2005年12月だった。
 メンバーがステージに登場したと思ったら、全員所定の位置につき・・・ではなく、中央にあるキーボードの周りに固まっている。松下氏がキーボードを操作して打ち込みのリズムが鳴り始め、「Idiot Funk」に。ZAZEN流ヒップホップ?の進化形とも言える曲だと思う。松下氏が太っとい指でちまちまとキーを叩いているのがちょっとほほえましい。「SUGAR MAN」から「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」で最初のクライマックス。彼らの曲の中でも盛り上がるという意味ではトップクラスだと思う。そして新作から「Honnoji」に。この曲のグルーヴ感、そしてトリップ感はやっぱりすごい。1stからの「MABOROSHI IN MY BLOOD」「IKASAMA LOVE」、そして2ndからの「安眠棒」「You make me feel so bad」と古い曲もやっていたが、吉田一郎氏のベースはすでにこれらの曲を完全に自分のものにしていた。バンドの指揮者、サウンドマスターとしての向井は絶対的な位置に鎮座しているのだけど、実は今のこの編成で重要なポイントになっているのは彼、吉田一郎なのではないかと思った。ベースを弾きながら向井のボーカルやギターに合いの手を入れていたり、複雑に展開する演奏の中で次の指示や合図を松下や吉兼に送っている。ライジングサンで見た時にはまだついていくのがやっとなのかな、と思っていたのだけど、どうもそうではないようだ。彼に限ったことではなく、ZAZEN BOYSの演奏は「一体、どれだけ練習してきたのだろうか」と思うほど呼吸がピッタリで、曲の中での決め事がきっちりと守られている。まさに「ディシプリン」なのだ。その積み重ねによってこのグルーヴを手に入れたのだと思うと素直に頭が下がる。
 前作の頃のライヴでは向井のキーボード主体の曲が若干軽く物足りない気もしていたのだけど、今は全く感じない。むしろ、向井の持つ孤独感・寂寞感のようなものを表現するのにこのチープなキーボードの音はよく合っていると思う。「I Don't Wanna Be With You」から「KIMOCHI」という流れで一つのクライマックスが成立しているというのがその証拠だと思う。本編ラストは問答無用に興奮する「RIFF MAN」。あっという間に戻ってきてアンコール。新作から「Memories」と、ラストに「Sabaku」。前述の孤独感がこれほど出た曲はこれまでZAZENには(ナンバガにも)なかっただろう。そしてメロディー自体が非常にエモーショナルだ。単純に、すごくいい曲だと思う。ZAZEN BOYSというバンドは向井秀徳という人の頭の中にある音を具現化するための一種のツールとして機能しているわけだけど、その音楽はエキセントリックでブッ飛んだものばかりではない。センチメンタルでエモーショナルな表現も完全に掌の上にある。そんな気がした。やり方は非常にストイックだが、実は王道のロックバンドなんだと思う。そして音に対する妥協のなさはまさにプロフェッショナルだ。聞いてる方は単純に盛り上がっていればいいはずだけど、どこか身を正されるような感覚を覚えてしまう。無駄なMCはなく、音で語る。そんな渋い夜。

■SET LIST
1.Idiot Funk
2.SUGAR MAN
3.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
4.Honnoji
5.Weekend
6.MABOROSHI IN MY BLOOD
7.IKASAMA LOVE
8.DARUMA
9.Fureai
10.安眠棒
11.You make me feel so bad
12.Asobi
13.The Drifting/I Don't Wanna Be With You
14.KIMOCHI
15.COLD BEAT
16.Friday Night
17.RIFF MAN
<アンコール>
18.Memories
19.Sabaku