無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

気がつけばエアギター。

Death Magnetic (Dig)

Death Magnetic (Dig)

 『セイント・アンガー』以来、実に約5年ぶりとなるメタリカの新作。2009年になった今だから言うと、2008年に聞いたアルバムの中で「最も興奮した一枚」である。単純に、聞いているとドンドン気分が高揚してきて、いてもたってもいられなくなるのだ。
 僕は元々メタルを聞いてきたわけではないし、メタリカについても1991年の『Metallica(ブラック・アルバム)』から聞き始めたくらいのライトリスナーだ。そういう人間からすると、このアルバムはジャストなんじゃないだろうかという気がする。『ブラック・アルバム』以降の重厚なサウンドを踏襲し、「The Unforgiven」シリーズの最新作「III」も収録されている。そこに初期を髣髴とさせるリフが乗っかっているのだから、これが最強のメタリカだ!と興奮する人が多いのも頷ける(僕を含む)。逆に、初期のメタリカが最高と思っているファンにとってはイマイチと感じられるかもしれない。どの時期のメタリカが好きかで評価が分かれるアルバム、と言えるのではないか。今作のテーマが単純な原点回帰、と言うわけでは決してないとは思うのだけど、彼らの最高傑作として名のあがる1986年の『メタル・マスター』を完全再現したライヴを行うなど、少なからず過去の自分たちの作品と向き合って得たものが反映されているのだろうとは思う(昔のロゴも復活しているし)。
 個人的には、やたら盛り上がるリフの嵐が最高である。プロデューサーのリック・ルービンは「今からレコード契約を取ろうとする新人バンドのつもりでリフを作れ!」とバンドを焚きつけたらしいが、その結果がこのアルバムなのであれば本作における彼の仕事は素晴らしいとしか言いようがない。ドキュメント映画「Some Kind OF Monster」でも明らかになったバンド内の確執や様々な問題を乗り越えて、完全復活を遂げた、と言っていいアルバムだと思う。一番短い曲でも5分以上、全10曲で74分強という過剰な長さもやりきった感があって個人的にはOKだ(通して聞くのは体力がいるが)。
 本作からすでに「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」に投稿があったという点でもメタリカらしさが十二分に発揮されたと言っていいのでは、という気もする。