バンドの品格。
- アーティスト: ザ・スクリプト
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)
- 発売日: 2008/10/22
- メディア: CD
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そう、完成度もチャート・アクションも評判もデビュー作とは思えないほど文句なしなのだが、あまりハイプ臭はしない。それは彼らの曲が庶民的であり、人間臭いからだと思う。彼らの曲に出てくるのは人生に疲れ、何もかもが上手くいかず嘆いている人間ばかりだ。ザ・スクリプトはそうしたテーマに対して「一緒に泣こう」と歌う。長年下積みを経てきたというキャリアもあるのだろうが、社会の底辺でもがく市井の人々に対する彼らの視点は優しい。「ザ・マン・フー・キャント・ビー・ムーヴド」なんかは泣きのバラードなのだけど、よく見るとフラれた女につきまとうストーカー一歩手前の曲だ。にもかかわらず、ザ・スクリプトが歌うと人間愛に満ちた崇高な曲に聞こえてくる。これも人徳というものだろう。
ロックというには洗練されすぎているし、ポップスとして消費するには音楽的密度が濃すぎる。いずれにしろ、若いバンドの潮流とは全く無関係なところで鳴っている音であることは間違いない。数年前にラウル・ミドンの音楽に触れたときのような、時代とは無関係に素晴らしい音楽との出会いを予感させる。