寝かせすぎたワインのような。
- アーティスト: GUNS N' ROSES
- 出版社/メーカー: Geffen
- 発売日: 2008/11/24
- メディア: CD
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バンドにおけるアクセルの俺様度が頂点に達しているだけに、サウンドもアクセルの志向をそのまま現していると言っていいだろう。ブルース色は薄れ、インダストリアルな打ち込みを多用したミクスチャー・ヘヴィー・ロックという印象のサウンドになっている。『チャイニーズ・デモクラシー』という新作のタイトルがメディアに流れ始めたのは僕の記憶だと2000年前後くらいのことだったと思うのだが、当時発表されていればミクスチャー・ロックのレベルを一段階引き上げるようなセンセーショナルなアルバムとして迎えられたんじゃないだろうかと思う。
全体の完成度は非常に高く、アクセルが偏執狂的にこだわったのは聞いていてもよくわかるのだけど、いかんせん方法論自体がここ数年の間で古びたものになってしまったのは否めない。それでも世間で言われているほど酷いアルバムではないし、むしろこういうのが好きだという人も多いと思うのだけど、「あのガンズの」「17年ぶりの」「14億使った」アルバムとして、ハードル上げた状態で聞くとこんなものかと思ってしまうのも事実。これなら数年前に出せなかったのだろうかと思えてくる。個人的には「アペタイト・フォー・ディストラクション」も「ユーズ・ユア・イリュージョン」もリアルタイムでお世話になった世代なので、このアルバムに対してフラットに向き合うのは非常に難しい。
ただ、おそらくはアクセル自身もこのサウンドがシーンの空気を一変させるような衝撃的なものでは既に無いということはわかっていると思う(もしかしたらわかっていないかもしれないが、それはそれで)。それでも彼はこれをガンズの新作として自信を持って発表したのだろうし、彼自身のボーカルもベタベタなバラードのメロディーラインも、「これがオレ様だ」という確信に満ちた音として鳴っているのだ。その頑固さやブレ無さがアクセル・ローズなのであり、アクセル・ローズこそが(今の)ガンズ・アンド・ローゼズなのだとはっきり示した点で意義のある作品だろう。何よりもこれから先「ガンズの新作は本当に出るのか?」というニュースに振り回される必要が無くなっただけでも非常に大きな意味があるだろう。また十何年も待たされるとなると話は別だが、ここからコンスタントにガンズの活動が軌道に乗りアルバムが発表されていけば本作の評価もまた変わってくるのかもしれない、と思う。