無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

カバーでパーティー。

一発勝負~カヴァー・アルバム

一発勝負~カヴァー・アルバム

 アンドリューW.K.による日本のヒット曲のカバーアルバム。元々は、着うたとして配信するために一部分をレコーディングしていたものらしいが、好評だったのでフルサイズでレコーディングし、こうして一枚のアルバムとしてコンパイルされることとなったようだ。もちろん、アンドリュー自身もこの企画に興味を持ち、乗り気だったということもあるだろう。
 収録されている曲は「キセキ」「羞恥心」などの最近のものから「ボヘミアン」「ラブ・イズ・オーヴァー」など往年の渋い曲まで幅広い。「哀 戦士」など、アニメソングまで含めた全14曲。選曲についてはレコード会社の主導だったのかもしれないが、それにしても何が基準でこうなったのかよくわからないセレクトだ。しかし、どの曲もアンドリューW.K.とわかるアレンジで、きっちりと仕上げているところがいい。手抜き一切なしのマジ勝負である。しかも英語の歌詞は原曲の翻訳を元にアンドリュー自身がメロディーに乗るよう歌詞として書いたものだそうだ(なので、面白くらいに意味はそのまま)。この生真面目さがアンドリューW.K.という人の人となりを見事に表していると思う。
 アンドリューによるセルフライナーノーツでも原曲がべた褒めされているが、ブルーハーツの「リンダリンダ」はそのまま海外でシングルで発表してもスマッシュヒットするんじゃないかと言うくらいシンプルなポップ・パンクになっている。個人的には「学園天国」や「Runner」あたりが気に入っている。逆に、「島唄」は海外には無いあの独特なメロディーラインを消化するのに精一杯という感じだ。外国人が歌謡曲やJ-POPに触れた時にどういう感想を抱くのか、と言う意味でも本作は興味深い。マーティ・フリードマンの文章と合わせてみると更に面白いと思う。
 パーティー・一直線的なソロアーティストとしてのアンドリューの新作もそろそろ聞きたいが、彼の魅力はまずその真摯で真っ直ぐな人間性にこそあるものである。本作にはそれがよく現れている。当然、同時発売のベストと合わせて聞くのがよろしいかと思う。
一挙両得~カヴァー+ベスト

一挙両得~カヴァー+ベスト