無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

今もまたすばらしい日々。

シャンブル【初回生産限定盤】

シャンブル【初回生産限定盤】

 誰もが驚いたであろう、ユニコーン15年ぶりの再結成アルバム。
 このアルバムを聞いて良いと思ったのは、15年前のユニコーンをそのまま再現(自己模倣)しようというのではなく、メンバー全員が40歳を超えた現在のユニコーンを素直に現したものになっているところだ。ちゃんと歌のテーマが年を取っているし、この15年の経験がきちんと彼らの音楽を深くし、前に進めていたと言うことがわかるものになっている。1曲目「ひまわり」にもあるように、人生の半分を過ぎた自分らがまたこうやって集まって音楽を作ることへの喜びと幸福感がストレートに出ている。特に、阿部の楽曲にそれが顕著だと思う。前述の「ひまわり」も、「R&R IS NO DEAD」もそうしたテーマの曲だ。阿部の40歳記念ライヴが今回の再結成のきっかけのひとつになったということもあるのかもしれないが、彼の奮闘ぶりが本作においては非常に目立つ。単純に数で言えば民生の曲が最も多いが、制作の中心になっているのは間違いなく阿部だと思う。個人的には「ひまわり」が聞くほどに感動的でどんどん好きになっていってる。この曲のサビを聞いていると、ユニコーンの解散を象徴していた(としか思えない)「すばらしい日々」に対するアンサーソングがこの「ひまわり」なんじゃないかとすら思えてくる。
 相変わらず5人5様、バラバラな楽曲が収められているが、阿部の楽曲にあるどことなくクラシカルなメロディーラインも、EBIの独特な世界観も(「AUTUMN LEAVES」なんて、明らかに「ペーター」っぽくて泣ける)、川西さんのやんちゃな声もドラムも、テッシーの味があるギターも、いい意味で力が抜けている(でも、「サラウンド」みたいに締めるところはきっちり締める)民生の曲も、ユニコーンユニコーンたらしめていた数々の要素がちゃんと今もバランスよくユニコーンを成立させているのがうれしい。初回限定盤のDVDを見ると、本当にレコーディングしている5人が楽しそうで、リアルタイマーならそれを見るだけでOKじゃないかと思う。当時を知らない若い人は、こんなバラバラのバンドがシーンの最前線にいたことに驚くのではないだろうか。5人のソングライターがいて、5人のボーカリストがいて、5人のアレンジャーがいて、各々の音楽性はバラバラ。こんなバンドがバンドとして成立していたこと自体が本来奇跡なのだ。
 93年5月、解散前最後のアルバムとなった『スプリングマン』発表時の民生のインタビューを読み返してみた。まだ解散が決まっているわけでも公になっているわけでもなく、アルバムが出来てこれからツアーというタイミングでありながら、出て来る言葉は非常に歯切れが悪くこの先の運命を予見するかのようなネガティブな言葉が全体を支配している。「こんなやり方のバンドで10年20年続くようなやつはいないって断言できる」とか(川西さんが脱退したことについて)「まあ、よく頑張った方じゃないかなあ。長いあいだ。」など、すでに民生自身ユニコーンに悲観していたことが伺える。しかし、そんな「長続きするわけがない」バンドが15年の空白を経て復活し、しかもその音楽が15年間ずっと続いていてここに至ったかのような味わい深いものになっている。素晴らしいことだと思う。今回の再結成も長続きするものではないのかもしれないが、本人達が飽きたり楽しくなくなればいつでも止めてもらって構わない。ただ、数年に1回でも良いからまた復活してほしい。そういうペースでなら、今の彼らなら続いていけるんじゃないだろうか。このアルバムを聞いていると、そんな気がしてくる。