無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

働く男たち。

UNICORN  ユニコーンツアー2009 蘇える勤労
■2009/03/27@北海道厚生年金会館

 追加公演となった3/24のZepp Sapporoもあっという間にソールドアウト。日本全国で超プラチナチケットとなったユニコーンの復活ツアー札幌公演最終日。ステージには大きな幕が降りていて、ステージ上部にはLEDでメッセージが流れていた。これ、モバイルサイトに登録してメールでメッセージを送るとリアルタイムで会場に表示されるというもの。なかなか遊び心のある企画。「○○ちゃん見てる〜?」的な個人宛メッセージのほか、ユニコーンのメンバーへのメッセージも多数。「EBIさん髪切ってー」と出てきた時に会場が笑いに包まれたのは言うまでも無い。
 オープニングは新作から「ひまわり」。幕は下りたまま、メンバーのシルエットが浮かび上がる。途中、川西さんのドラムが入ると同時に幕が下り、大歓声。5人はお揃いのツナギ姿。なんかもう、この5人が一緒にステージにいるだけで感激してしまう。ああ、今ユニコーン見てるんだなあ、という当たり前の感想しか出てこない。『シャンブル』の曲と昔の曲をいい塩梅に散りばめたセットは、当然各メンバーの見せ場もきちんと用意してある。「スターな男」で一気に盛り上がった後は、EBIタイム。新作から「ボルボレロ」の後、懐かしの「フーガ」。基本的にこのツアーは2種類のセットリストで回しているらしく、2日連続同会場でやる場合はセットを分けているようだ。前日のセットではこの「フーガ」の替わりに「ペケペケ」だったらしい。ああ、そっちも見たかった・・・!「オッサンマーチ」でテッシータイム。そして「キミトデカケタ」から「ロック幸せ」!川西さんタイム。ここでは民生がドラムをプレイ。民生はEBIがハンドマイクで歌っているときにベースをやってたりもする。阿部Bもギターやるし、テッシーがキーボードいじったりもするし、各メンバーがマルチプレイヤーなのもユニコーンの大きな特長だ。「自転車泥棒」は大好きな曲なので聞けてよかった。別セットだとこのテッシー曲パートは「デーゲーム」だったみたいだけど、どっちも捨てがたい。
 意外な選曲としては「PTA」。ここで初めて?と言っていいくらい阿部Bが前に出て頑張る。この曲、TMネットワークを見事にパロった曲で個人的にも大好きなのだけど、解散前はライヴでやったことはほとんど無かったと思う。にもかかわらずファンの人気は高く、先日発売されたファンセレクトによるベスト盤にもしっかりと入っていた。今回のツアーで演奏されたのもそんな要因があったのかも。EBIと川西さんがよくわからないラップユニットになって乱入するという爆笑パートもあり。これ、最高だった。単に曲を他演奏するだけでなく、いろいろな趣向を凝らしたりもするわけだけど、客が面白いかどうかは別にしてまず自分たちが楽しんでバカバカしいことをやっているところがいい。結果的に、その方が客も楽しかったりするものなのだ(楽屋オチでない限りは)。そのまま阿部Bメインボーカルのシングル「WAO!」へ。15年ぶりの復活を華々しく飾るシングル曲がメインボーカリストによる曲じゃないあたりがいかにもユニコーンなのだけど、アルバム『シャンブル』を全編聞くと確かにじゃあ他にどれをシングルにするか迷ってしまうのも事実。先日のアルバム感想でも書いたけど、今回の再結成は阿部Bが先頭に立って全体を引っ張っていた印象が強く、この曲の印象的なギターリフからしてまさにそういうものなんだと思う。ユニコーン版「マイ・シャローナ」ですね。海老ボーカルによる「BLACKTIGER」に続き、ここからはノンストップの本編クライマックス。「R&R IS NO DEAD」〜「サラウンド」はアルバムでも核となるシリアスな流れで、再結成に当たっての喜びや積み重ねてきた年月の重みをしっかりと受け止めるような感動的なものになっていた。これがあるからバカバカしい遊びも全て生きてくる。そして「大迷惑」。いまや日本のロックを支える大御所でありトップランナーとなった奥田民生がハンドマイクでステージ中を駆け回り転げまわりながら歌うのである。素晴らしいと思わない?「こいつら変なことやってる面白いバンドだな」と世間一般が認識するきっかけとなった曲であり、(ある意味で)代表曲。それが全く変わらないアレンジでこの2009年に聞くことが出来るとは。ホント感無量。そしてこれも名曲中の名曲「ヒゲとボイン」。「車も電話もないけれど」はノリノリなのだけど、何故かしんみりしてしまう。アルバムでもラストを飾った「HELLO」で本編終了。
 アンコールはジャケットやPVでもおなじみの横山やっさんルックで登場。そして本編では他のメンバーに比べ若干引き気味だった阿部Bがここぞとばかりに中央に出てくる。というかここからはもう彼だけのための時間。「人生は上々だ」から延々と続くおしゃべりタイムの始まりである。他のメンバーは座って後ろでなんか話しながら笑ってたりする。この場はお任せ状態。完全に傍観者である。よくよく考えればありえない光景だ。阿部Bの客いじりと下ネタを交えたMCは爆笑の渦で、20分くらいはしゃべっていただろうか。そして元「CSA」、現「SMA」となった事務所の社歌(笑)を2009年に蘇らせる。どんどんスピードアップしていくスラッシュパンク的展開も往年のままだ。阿部Bの阿部Bによる阿部Bと客のためのアンコール。2度目のアンコールはゆるゆると「開店休業」。のほほんとしてはいるが、実にいい曲である。しみじみとした気持ちでライヴは終了した。別セットではラストは「すばらしい日々」だったらしい。ああ、聞きたかった・・・。
 演奏や歌唱は言うまでもなく、民生のMCのユルさ加減も何もかもが年月を経てスケールアップしていた。当然ながら、バンドとしてのまとまりも解散直前とは比較にならない。再結成とか抜きにして、単純に今日本にこれだけのスケールでやりたいように自分たちの音楽を好き勝手に鳴らしているロックバンドがどれだけいるのだろう、と思った。滅茶苦茶なようでいて、あまりにもエンターテインメントとして正しい。もう遅いかもしれないけど、往年を知っているファンならもちろん、そうでない人も見ておいたほうがいいと思う。今後この再結成が続くのかどうかはわからないけれども、仮にそうだとしてもこのタイミングでのこのテンションのステージと言うのは2度と見られないものだと思う。幸せだった。

■SET LIST
1.ひまわり
2.スカイハイ
3.スターな男
4.ボルボレロ
5.フーガ
6.水の戯れ〜ランチャのテーマ〜
7.オッサンマーチ
8.キミトデカケタ
9.ロック幸せ
10.AUTUMN LEAVES
11.自転車泥棒
12.ザギンデビュー
13.PTA〜光のネットワーク〜
14.WAO!
15.BLACKTIGER
16.R&R IS NO DEAD
17.サラウンド
18.大迷惑
19.ヒゲとボイン
20.車も電話もないけれど
21.HELLO
<アンコール 1>
22.人生は上々だ〜SMA
<アンコール2>
23.開店休業