無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

長い目で見なくても。

告白

告白

 チャットモンチー、約1年半ぶりの3作目。デビュー以来、着実に進歩し、人気も上昇し、最速で武道館まで行ってしまった彼女らの歩みはものすごいスピードだった。どこまで行ってしまうのだろう、と心配になるほどだが、この3作目でさらに進化を遂げている。この3ピースには底が見えない。
 いしわたり淳治の他、亀田誠治をプロデューサーに招き、セルフプロデュースの曲も収められている。しかし、それによって曲の個性がバラバラになることもなく一貫した流れのあるアルバムになっている。それはつまりバンドの地力が確実にアップしていることの現れである。誰がプロデュースしようとも、絶対にぶれないチャットモンチーの核がしっかりと存在しているということである。
 歌詞の面では福岡晃子の詞にゾクッとするくらいの進化を感じた。ラブソングでも、その裏に何とも言えない色気と怖さが見え隠れする(この「怖さ」というのは僕が男だから感じるものかもしれない)。そして基本ラブソングの形を取ってはいるが、単純な男女の感情のみではなく、人間としての哲学・文学性のようなものがきっちりと存在している。この深さはミュージシャンとしてだけではなく、女性として、人間としての彼女の成長を物語るものじゃないかと思う。特に「海から出た魚」「Last Love Letter」あたりは白眉。どちらかというとほのぼのとした恋愛風景を得意とする高橋久美子の詞と対を成し、いいバランスになっているのじゃないだろうか。それに引っ張られて相乗効果で橋本絵莉子の曲もどんどん深くなってるように思う。
 1枚目のジャケットは赤を基調とし、2枚目は青だった。本作はその両方が混ざっている。過去2作を踏まえ、そのどちらをも凌駕し大きな成長を遂げたバンドの自信が垣間見える。デビューしたときから彼女らは少なくともサウンド面においては「女の子バンド」という冠で見られることを頑なに拒絶していた。単純に、バンドを始めてギターを持ったらこんな音を出したいだろう、と素直に憧れるような音を目指していた。そういう面でもチャットモンチーのロックがひとつ完成したと言えるアルバムかもしれない。やってることは難しくないかもしれないけど、仮にもっと上手いミュージシャンが彼女らの曲をコピーしても絶対にこういう音にはならないだろう。チャットモンチーはすでに、絶対無二のオリジナルなロックバンドになってしまった。本当に不思議な、面白いバンドだ。