無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

うたは自由をめざす。

FREEDOM(初回限定盤)(DVD付)

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Dragon Ash約2年ぶりのオリジナル・アルバム。結成10周年のベスト・アルバムを挟み、コンスタントにシングルを発表しつつのアルバム。つまり、この2年間ずっとDAとしての活動は続いていたということだ。降谷建志自身も語っているように、1ヶ月に1曲というペースでレコーディングは行われていたらしい。締め切りを設定せず、ゆっくりしたペースでリラックスした空気の中レコーディングした結果、この素晴らしいアルバムが生まれたということだ。『Rio de emocion』、『INDEPENDIENTE』に続き、ラテン・テイストを標榜してからは3作目になるが、その最高峰であると断言できるし、DAがどういうバンドであるか、どういうメッセージを持っているバンドであるか、ということをあまりにも完璧に写している。
 一般的に「ミクスチャー」と言われたバンドの多くがそういうスタイルだったために誤解されがちだが、かつて栄華を誇った「ミクスチャー」という音楽は、単にロックやメタルにラップを乗せたものでは当然、無い。このアルバムにはそのまま「Mixture」という曲が収められている。英語の歌詞だが、歌われているのはつまり降谷なりのミクスチャーの定義である。それはつまり自らの中にある情熱の炎を自由に音にして表出すること、それがミクスチャーなのだということだ。その根っこにある自由というキーワード、つまりはアルバムタイトルなわけだが、タイトル曲でも続く「Desperado」でも、同じことを歌っている。DAはラテンという武器を手にして以降、独自のミクスチャーを実現してきた。それは日本において誰も作ったことのない音楽だった。その最高峰とも言えるこのアルバムだからこそ、「自由」というテーマは説得力を持って響く。
 そして、もう一方でアルバム中重要な位置をしめているのは「繋がりSUNSET」と「運命共同体」というシングル曲。仲間や家族、友人、自分の周りにいる人々との繋がりと感謝を非常にストレートな言葉で歌ったこれらの曲はDAが一貫してどういうバンドだったのかを思い出させてくれる。今は多くのアーティストが同様のテーマで曲を書いているが、90年代後半、DAが登場するまでは若いロックバンドが親や家族に感謝する曲などほとんど歌ったことはなかったのだ(きっかけは、「Grateful Days」の大ヒットだったと思う)。むしろダサいと思われていたくらいだろう。そういう意味でもDAは「自由」だったのであり、シーンの最前線で道を切り拓いてきた先駆者だったのだと思う。