無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

独り立ち。

#1【初回限定盤】(DVD付)

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 元、というか、活動休止中のTHE MAD CAPSULE MARKETSのTAKESHI(上田剛士)によるソロ・ユニットAA=(エーエーイコール)のデビュー・アルバム。クレジットにはTAKESHIの他、BACK DROP BOMB白川貴善(vo)、MADの元オリジナル・メンバーだった児島実(g)、RIZE金子統昭がドラムアドバイザーとして参加している。ライヴも現在このメンバーで行っているが、パーマネントなバンド体制として継続していくのか、流動的なソロ・ユニットとして活動していくのかは不明。
 サウンドとしてはデジタルに処理されたビートとベースラインにヘヴィーなギターリフが絡んでいくという、後期MADの基本路線に沿ったもの。中心人物だったTAKESHIがやっているのだから当然といえば当然だが、それよりもスマートな印象を受ける。ハードコア的な要素は幾分薄められ、どの曲にもポップなメロディーやリフがきちんと用意されている。ボーカルにはラップ的な要素も強いが、きちんとメロディーを聞かせるという意味でも白川の起用は正解だったと思う。MADのボーカルだったKYONOが一足先に「WAGDUG FUTURISTIC UNITY」としてソロ活動をスタートさせたが、それが様々なアーティストとのコラボレーションでハードコア一辺倒と言ってもいいテンションの高い作品をリリースしたのとはある意味対照的。MADは限定生産シングルにフィギュア、チョロQ、プラモデル等のオマケが付属することでも話題となっていたが、「WAGDUG〜」のジャケットを飾ったガスマスクの模型などを見るとそういう部分ではKYONOの個性が出ていたのかと思う。このAA=とWAGDUGのアルバムを並べて見るとTAKESHIとKYONOの二人がMADというバンドのどういう部分を主に担当していたのかが浮き彫りになるようで興味深い。また、そうした個性の違いが見えてくればくるほどMADというバンドがなぜ活動休止しなければならなかったのかということも理解できる気がする。
 もうひとつ、AA=でTAKESHIという人の個性が表に出ているのは曲のテーマである。AA=というユニット名も"All Animals Are Equal"から取られているように、たとえば動物虐待、あるいは戦争や不況など今の世の中を覆う暗いムードであったり、自由を束縛しようとする体制や権力に対するアンチと希望を歌ったものが多い。それらは非常にダイレクトでエモーショナルな言葉で書かれており、ともすればナイーヴすぎるんじゃないかと思うくらい青臭かったりもする。もともとTAKESHIという人は繊細な感性を持つ人だし、MAD後期にも同様のテーマで書かれた曲はあったが、AA=ではより直接的ではっきりとそういうことを歌うんだ、という意思の元に曲が作られている。個人的にはあまり説教臭い方向には行ってほしくないのだけど、今のところサウンドがバキバキにカッコいいので大丈夫。MADから何かが引かれてこうなりましたではなく、きちんとTAKESHIの、AA=の100%を見せてくれている。キャリアと自信に裏打ちされたからこそのソロ・デビュー作だと思う。