無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

不況に負けないバンド。

プロレタリアン・ラリアット(初回限定盤)(DVD付)

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 怒髪天、1年半ぶりの新作は7曲入りのミニアルバム的なボリューム。でも、彼らの場合はこのくらいのサイズでも全然OK。下手に10何曲も入っているよりもバラエティ豊かにスパッと楽しませてくれるほうが個人的にも好みだ。
 タイトルからして小林多喜二の「蟹工船」ブームに乗ったみたいな感じだが、先行シングル「労働CALLING」(タイトルだけで勝ち)に見られるように、まさに労働者のためのアルバムというのがテーマになっている。元々怒髪天の中にセレブ的な要素など無いに等しい(すみません)が、彼らの持つ庶民性がいい形で音になっていると思う。「ロクな仕事にも就けねぇ」「働いても働いても暮らしは楽にならねぇ」「でも、生きていくしかねぇ」という、苦しい庶民の生活を力強く、そして前向きに歌い上げる。日本のロックシーンにおいて怒髪天にしかできないような、泥臭いアルバムである。「労働CALLING」のやけくそなパワーや「全人類肯定曲」の清々しい開き直りなどはまさにそういうテーマの曲で、アルバム全体のムードを形作っている。それに「よりみち」や「うたのうた」のセンチメンタルな曲が彩りを添え、「GREAT NUMBER」「マン・イズ・ヘヴィ」のロックンロールは推進力を与えてくれる。30分弱と短いながら各曲とも粒が立っていてメリハリがあるし、コンパクトにまとまっていていいアルバムだと思う。
 しかし怒髪天にはブルーカラーが良く似合う。100年に一度の大不況と言われる今、こういうアルバムを狙って作ってしまえるのは彼らの強みだと思う。