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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

より、映画らしく。

しんぼる [DVD]

しんぼる [DVD]

■しんぼる
■監督:松本人志 出演:松本人志
 松本人志監督の第2作。前作は賛否両論いろいろあって、僕はどちらかといえば賛だったけど「映画」っぽくはないな、と思った。どうしてもお金と時間をかけたコントに見えてしまう(「VISUALBUM」の高級版とでも言えばいいのか)。そういう意味において、本作もまたコントの延長と言えなくも無い。特に、松本が部屋の中で一人芝居を行うパートはほぼ全てそう思えてしまう。しかし、前作よりも「映画」っぽくなっている、と思える部分も多々ある。まず、いい絵がところどころにあること。こういう絵を撮りたい、という監督の意思が明確に見えるシーンが飛躍的に増えている気がする。テレビのサイズではなく、スクリーンで見るべき絵があるだけで、映画として作品を作る意味がぜんぜん違ってくる。少なくともそういう意味では『大日本人』よりも相当映画らしい。
 ストーリー自体は無いに等しいもので、松本人志演じる「男」が何者でどこから来たのかなど全く説明が無いまま映画は進行する。壁にあるチ○コ(しんぼる)を押すと何かが出てきたり何かが起こる、というアイディア一発なのだが、最終的に非常に観念的なラストシーンを迎えるので、解釈は見たものの感性に任されてしまう。興味深くはあるが、不親切な印象を受ける人もいるだろう。設定とその背景が全く具体的ではないので、映画とは言っても実験映画のような雰囲気もある。でも、観念的であるがゆえに松本人志という人のものの考え方が少し透けて見えるような感覚もあって、そこは面白い。例えば、男は最終的に万物の神のような存在になったと考えることもできるのだけど、それがおっぱいではなくてチ○コであるというところなど。
 リアルなメキシコのドラマパートと、不条理な松本の一人芝居パートの対比はよくできていたと思う。ただ、前述のように松本のパートが映画ではなくコントに見えてしまうのが残念。例えばこれが松本人志ではなく、他の俳優(あまり顔が割れていない人)だったらどうだったろうか。もう少し映画として入り込めたような気がする。松本はこのシーンがあまりにも不条理で観念的であるがゆえに、他の人間が演じることで自分の頭の中にある世界とかけ離れてしまうことが怖かったのだろう。それを他の役者を使って表現できるかどうかが、今後の映画監督・松本人志の課題なのではないかと思う。