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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

永遠の4 REAL。

Journal for Plague Lovers

Journal for Plague Lovers

 ALL LYRIC RICHARD EDWARDS。これがこのアルバムの全てだと言ってもいいと思う。1995年2月、滞在先のホテルから失踪したまま行方のわからないリチャード・エドワーズが残した詩の断片から作られたこのアルバムは、『ホーリー・バイブル』以来の4人によるマニックスのアルバムなのである。なぜ今、リチャードの残した詩を使おうと思ったのかは分からない。が、昨年の11月に正式にリチャードの「死亡宣告」が為されたという事実は無関係ではないだろう。そして、このアルバムは断じて、リチャードを供養しようとして作られたものではない。むしろ、リチャードを永遠に生き永らえさせるために作られたアルバムという気がする。
 全体としてマニックスらしいエモーショナルなメロディーが耳に残るざっくりとしたロックンロールが多い。スティーブ・アルビニによるサウンドは非常にダイレクトで生々しいリアリティに満ちている。リチャードの詩はきちんと歌詞として体裁が整えられていない散文的な断片なので難解すぎて真意がつかめないものも多い。しかし、成熟を拒否した青い衝動がギラついた怒りと混乱をそのまま叩き付けたような言葉は今見てもリアルで、痛々しさすら感じる。ジェームスのボーカルは過度の感情移入を避け、淡々とリチャードの残した言葉をなぞっているように聞こえる。前述のように溌剌としたロックンロールが多いのだけど、初期や『ホーリー・バイブル』に回帰したような感覚はない。
 あれから14年余りが経ち、リチャードの不在を乗り越え、40才になった彼らが現在鳴らしている音だ。このアルバムには無理をしているところがない。だからリチャードが「そこにいる」ような感覚になってしまうのだ。供養ではない、と言ったのはつまりそういうことである。