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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

更なる成熟に向けて。

JOURNEY

JOURNEY

 リップスライム、約1年半ぶりの7作目。今作も、前作同様にFUMIYA以外の4人がソングライティングに寄与し、サウンド作りを分担している格好になっている。MCが2人ないし3人の曲があるのも前作同様だ。バランスとして、今のやり方が自分たちのペースに合っていると判断しているのだろう。このやり方のいいところは、FUMIYAが全部の曲を書かなくてもいいからだと思うが、彼の曲のクオリティが非常に高くなっていることだ。
 サウンドとしては非常に生音が多く、実際にミュージシャンが録音したものをサンプリングしてバックトラックに使用している。FUMIYA自身がギターを弾いている曲もある。それにより音自体は柔らかく温かみのある印象になっている。トラックに隙間ができることを恐れずに、大胆に生音をフィーチャーしたという感じだ。アルバム全体のテーマは「60年代」だったそうで、ある意味コンセプチュアルにサウンドを選択したと言えるのかも。FUMIYA以外の曲でも方向は同じなので、アルバム全体に統一感が出ていると思う。
 ここ2、3年のリップの曲を聞いていて思うのは、シリアスな人生観の見える曲が増えてきているということだ。もちろんそればかりではなく、本作にも他愛のない、ナンセンスな内容の曲はあるが、随所に襟を正すようにシリアスな曲があるのだ。これは彼らが年齢を経て、結婚したり子供ができたりということと決して無縁ではないと思う。中身のない空虚な応援歌のような音楽が多い中で、自分たちの歩んできた道と経験とそれにより培われた人生観が見える説得力のある音楽は、日本のヒップホップというジャンルでは少ないと思う。少なくとも、ロックよりは。ロックの歴史は50年以上だが、ヒップホップはせいぜい30年。日本で、きちんとメジャーの中でヒップホップが市民権を得たのはここ10年ちょっとでしかない。年を取っても活躍するロック・アーティストは今では普通だが、ヒップホップで年を取ったアーティストの姿は、今の日本ではあまり想像できないのではないか。
 リップスライムは半分おちゃらけつつも、きちんと年を経て成熟していく様をシリアスに表現することのできるヒップホップユニットになりつつある。ヒップホップの歴史が浅い日本という国では、スチャダラパーと並び非常に貴重な存在だと思う。