嵐の前の静けさ。
- アーティスト: Mars Volta
- 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
- 発売日: 2009/06/23
- メディア: CD
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セドリックのボーカルはほとんどの曲では声を張り上げてシャウトするような感じではなく、淡々と物語を綴る語り部のような印象だ。歌詞も壮絶なストーリーと感情がもつれ合って爆発するようなものではなく、暗黒の叙事詩とでも言うような佇まいである。異形のプログレを展開していたマーズ・ヴォルタのこれまでのアルバムとは異質の、地味なアルバムとも言える。全8曲で「八面体」というタイトルも、彼らにしてはやや安直という気がする。ただ、とは言ってもリラックスした雰囲気のアルバムではない。あくまでもサウンドの外面がそういう印象だと言うだけで、根本にあるオマーとセドリックの怒りや、音楽のモチベーションとなっている感情そのものは何も変わっていない。アウトプットの仕方として、今回こういう方法を選択したと言う話のようだ。
今後のマーズ・ヴォルタの音楽がどういう方向に行くのか、それはオマーにしか分からない。ただ、サウンドのテクスチャーにしてもバンドの形態にしても、どういうやり方をも許容できる柔軟性がマーズ・ヴォルタのオリジナリティを支えていると思うので、何かひとつこれと言った方法論があるわけではないのだろう。本作を支配する緊張感はこの静けさの後に何が起こるのか分からないという不気味さでもある。