無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

理系クンの書く音楽。

A beautiful greed

A beautiful greed

 ACIDMAN、1年3ヶ月ぶりの7作目。「±0」、「CARVE WITH THE SENSE」など、ハードなギターリフが疾走するナンバーもあるが、全体にメランコリックなメロディーが支配する作品となっている。そのメランコリックさには理由があって、本作のテーマが宇宙の真理と、それに比した自分たちのちっぽけさ・儚さに焦点が当てられているからだと思う。大きなテーマとしては前作『LIFE』から地続きだが、一つ一つの内容がより哲学的かつ抽象的になっている。
 僕も大学は理系出身でありながらそんな専門的なことはわからないのだけど、数学とか物理というのは突き詰めると究極的には哲学的なところに行ってしまうもの、という気がしている。マクロに宇宙を見るとその中で自分の存在は何か、ということになるし、素粒子とかの話になると自分を形作るものは何か、ということになる。結局は自分自身の存在とその意味に向かい合うことになる。今のACIDMANのテーマはそういう感じで浮かび上がってきたものなのではないか、と勝手に想像している。
 昔、僕はACIDMANの理系的に全てを論理的に整合取って音楽を配置するようなやり方に限界を感じたこともあったのだけど、今の彼らはもっと抽象的、感覚的に音楽を構築しているような気がする。『green chord』の頃からそういう感じが出てきたと思う。大木伸夫の中にある真理は基本的に変わっていないのだと思うけど、それを音楽として具象化する時の自由度が上がっていると思う。「HUM」の、簡潔な言葉で美しく真実を言い切ってしまう鮮やかさには思わず鳥肌が立ってしまった。