無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

電気はいつもそこにある。

20(初回生産限定盤)(DVD付)

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 電気グルーヴの結成20周年記念アルバム。なのにというべきか、だからというべきか、彼ららしい言葉遊びと冗談センスが充満した怪作に仕上がっている。好きな人には大ウケだがダメな人にはとことんダメな、悪ふざけの極致。その意味ではかつての『ドリルキングアンソロジー』にも匹敵すると言えるかもしれない。
 なぜ今こういうアルバムを作ったのかと言えば、簡単に言えばリハビリが終わったということなんだろう。久々に電気グルーヴとして音楽活動を再開しようと言うときに、さすがに彼らでも現在のシーンでの立ち位置や自身のイメージ、ファンの顔色などいろいろなことを考えて作品をリリースしていたと思う。『J-POP』はまさにそういうアルバムで、歌モノ中心のとっつきやすい作品だった。『YELLOW』はサウンド重視の、よりフロアでの即効性に富んだアルバムで、『J-POP』と合わせてひとつと考えるとバランスのいい作品だったと思う。個人的には多く聞き返すのは圧倒的に『YELLOW』の方だ。この2作で21世紀の電気グルーヴとしてのスタンスが明確になったからこそ、本作『20』ではここまで吹っ切ることができたのだろう。
 ある意味、これで復活後の電気は持ち球を全て出し切ったとも言える。そして8年のブランクを経てもその存在感は全く失われていなかったことも証明された。むしろベテラン、重鎮としての貫禄やアンタッチャブルさが増したことで余計にタチが悪くなった。全くうれしい限りである。こんな悪ふざけ爆発のアルバムの後に文句なしのカッコよさを誇るバキバキのシングルを発売するのだから手がつけられない。
 昨年11月にNHK-BSで放送された電気グルーヴ20周年記念特番で卓球が話していたが、これでまたしばらく電気としてのリリース活動は休むかもしれないとのこと。この2年間、怒濤のリリースとツアーで楽しませてもらったし、気が向いたらまた戻ってきてもらいたい。そしてこれが一番重要なことなのだけど、作品としてのリリースが無くても、雑誌でバカな話をしていたり、卓球のDJで瀧がMCをしていたり、それだけで電気グルーヴなのだ。ということが彼らの不在の間に分かったので、もう大丈夫。