無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ガラパゴス・バンド。

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 ジェット、約3年ぶりの3作目。前作『シャイン・オン』はセスター兄弟の父親の死と言う出来事が大きく影響し、個人としてもバンドとしても困難な局面を向かえた上で制作されたアルバムだった。サウンドのスケール感を大きく発展させ、音楽的な深みを増した2作目は完成度は高かった(と、僕は思う)。困難を乗り越えてアルバムを完成させたことは彼らにとって大きな自信にもなったはずだが、残念ながら前作はデビュー作ほどの成功を収められなかった。ファンがジェットに求めていたのはわかりやすいギターリフとコーラス、ライブでシンガロングできるポップなロックンロールナンバーだったと言うことなのだろう。本作は2作目で得たスケール感を維持しつつ、デビュー作での勢いやリフの魅力を存分に発揮した現時点でのジェットの最強作と言っていいと思う。
 ジェットは、ストーンズツェッペリンエアロスミスAC/DCなど、魅力的なリフを持つロックナンバーを生み出してきた先達の系譜に並ぶ資格があるバンドだと思う。時代に振り回されず、自分たちのロックンロールを追及できるだけのふてぶてしさを持ったバンドは実はそうはいない。「シーズ・ア・ジーニアス」や「タイムズ・ライク・ディス」の切れ味鋭いリフはライブでも盛り上がるだろうし、「レット・ミー・アウト」のじわじわ来るスケール感もセカンドを通過したからこそのものだろう。ほとんどが3分〜4分とコンパクトにまとまっているのもいい。自分たちの楽曲がどういう形であれば最も良く聞こえるか、分かっているのだと思う。
 自分たちの音楽とファンに真摯に向き合った結果が本作なのだと思う。気持ちいいロックンロールが鳴っている。