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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

より、核心に向けて。

Humbug

Humbug

 アークティック・モンキーズ、約2年ぶりの3作目。彼らの特徴であったスピード感のあるロックンロールとは一転し、ミドルテンポでゆったりとしたサウンドが中心になっている。正直、ここまで重心の低い、どっしりとしたロックが鳴らせるバンドだとは思っていなかった。若さの勢いとかそういうものではない、しっかりとした意思がこのアルバムを転がしている。
 00年代におけるアークティック・モンキーズの新規性というのは、例えばインターネット、特にマイスペースなどでの曲配信によるレコード会社を経由しない独自のファンベースによる広がりなど、バンドのあり方そのものに由来するのだと僕は考えていた。それは間違いではないとは思うが、それだけではなかったのだ。リバティーンズ直系のロックンロール・リバイバル的で性急なガレージ・ロックと思っていた音は本作で前述のような、重心の低い大文字のロックに変貌した。その根底にあるのはブルースである。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・オムのプロデュースの力もあるのだろうが、彼らのロックバンドとしての核がここに来て形になったと見るのが正解だろう。彼らにとってロックとは夢や幻想ではなく、紛れもない現実そのものだったということだ。
 歌詞も、イギリスの若者の日常やその裏の感情を赤裸々に書くようなものから、もっと広い視点から世界で起こっていることを反映するものになっていると思う。その分抽象的になったとも言えるが、より核心に近づいている。優れたロックは時代を映す鏡である。確実にアークティック・モンキーズはその道を歩んでいる。