無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

人間は成長し変化する生き物だと言うことをウィーザーから学ぶの巻。

Raditude (Dlx)

Raditude (Dlx)

 ウィーザー、約1年半ぶりの7作目。こんなに短いスパンでアルバムが出るとは思っていなかったので少し驚いた。アルバムタイトルは"RAD"と"ATTITUDE"を合わせた造語とのことで、ウィーザーにしてはずいぶんとアグレッシブなタイトルだと思う。音の方でもそのアグレッシブさは見て取ることができる。プロデューサーは前作に引き続いてのジャックナイフ・リーと、アヴリル・ラヴィーンPUFFYとの仕事で知られるブッチ・ウォーカーが主に担当している。アルバムの冒頭を飾る先行シングルの「If I wondering〜」はモータウン系のリズムをフィーチャーしたビート・ポップ(最初聞いたときはザ・ジャムの「Town Called Malice」かと思った)であり、聞いていて気分が高揚するポップの見本のような曲だ。この曲に代表されるように、リズムが跳ねる陽性の曲が多く収録されている。
 前作ではリヴァース・クオモ以外のメンバーによる曲が多かったが、本作ではドラムのパトリック・ウィルソンによる1曲が収められているのみ。その代わり、本作はリヴァースと外部のソングライターによる共作が大半を占めているのが特徴と言える。本作の持つポップさ、陽性な部分はブッチ・ウォーカーによるプロデュースと、共作による風通しの良さが大きく影響していると思う。サウンド的にも打ち込みを多用したり、ラップが入ったり、インド風ボーカルをフィーチャーしたりと、バラエティに富んでいる。バンドの「新しいモードに動き出すぞ」という意思がこういう面に現れていると思うし、その意味においてはタイトル通りでもある。そしておそらくはこういう姿勢をどう捉えるかで、本作に対する評価は大きく変わると思う。
 前作からそういう兆候は顕著に現れていたが、本作でのウィーザーはいわゆる「泣き虫ロック」的な繊細ギターポップ、ではもはや無い。 それが好きだったファンは、必ずしも本作の方向性を歓迎しないだろう。しかし、リヴァースはもはや1児の父であり、いつまでもうじうじと悩んでいる青年ではないのだということもまた事実なのだ。あの頃のウィーザーが好きだった、と言って『ブルーアルバム』や『ピンカートン』を繰り返し聞くのもいいだろう。僕もたまにする。でもリヴァースもウィーザーも成長し、変化していくのだ。それを止めることはできない。問題はその変化の結果としての曲・サウンドが魅力的かどうかということだ。個人的には好き。ファウンテンズ・オブ・ウェインみたいだなと言えばまあ、その通りなんだけど・・・。